2013 Fiscal Year Annual Research Report
高等教育機関に在籍する聴覚障害学生の支援の在り方に関する研究
Project/Area Number |
13J00606
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
杉中 拓央 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 聴覚障害 / 障害学生支援 / 高等教育 / 修学支援 / キャリア発達 / 主体的参加 |
Research Abstract |
本研究は、高等教育機関における聴覚障害学生支援の実態を明らかにし、その改善に資することを目的として、聴覚障害学生と支援学生、そして彼らを仲介するコーディネータ(主として高等教育機関内において障害学生支援に携わっている職員)に対し、現場における支援の実施状況等を質問紙調査及びインタビュー調査によってたずね、分析の上、知識化を行う計画であった。本年度は、計画に従い聴覚障害学生・支援学生・コーディネータの三者を対象とした調査研究を並行して実施した。 コーディネータを対象とした質問紙調査の結果から、今日の聴覚障害学生支援は、従来の講義時の情報支援から一歩進み、聴覚障害学生の主体性の獲得等、彼らの卒業後の生活が意識されていることがわかった。しかし、実際の支援業務の範疇においては、まだ十分に取り組まれてはいなかった。特に、小規模校においては聴覚障害学生の在籍が少なく、支援体制の維持等を課題としており、より教育機関の規模・性格を意識した検討が必要であることが実際に把握された。 聴覚障害学生を対象としたインタビュー調査の分析結果からは、被支援者としての自覚、学生生活の空間的拡大、他者からの刺激といった要因が、聴覚障害学生の支援に対する態度を肯定的に変容させることがわかった。これらの獲得を促すことで、先行研究に指摘される支援学生との齟齬を軽減・解消できると考えられる。また、支援学生を対象としたインタビュー調査の分析結果からは、現行の支援に望むものとして、聴覚障害学生に関する事前情報の提供、研修の充実、支援に対する評価、聴覚障害学生からの働きかけといったものが挙がり、聴覚障害学生の支援に対する主体的参加の必要性を支持する結果となった。今後は個々の教育機関の支援環境も参照し、問題をより構造化していく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従い、聴覚障害学生と支援学生に対するインタビュー調査と、聴覚障害学生支援の取り組みがある高等教育機関の職員に対する質問紙調査を終え、分析を行った。これらの研究成果は随時関連学会で発表し、論文にまとめ投稿することができた。以上のことから、研究の進捗はおおむね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
高等教育機関に対する質問紙調査をとおして、個々の学校の規模や性格によって聴覚障害学生支援の捉え方や問題意識にばらつきがあることが実際に把握された。従って、これまでの調査によって得た事例を細かく知識化していくことで、聴覚障害学生支援の環境構築における弾力的なガイドラインを検討する。
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Research Products
(4 results)