2014 Fiscal Year Annual Research Report
リチウムイオン内包フラーレンを用いた酸化還元複合光触媒システムの構築
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13J00627
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川島 雄樹 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 電荷分離 / 光電子移動 / 超分子 / 金属内包フラーレン / 再配列エネルギー / エレクトロニックカップリング |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、リチウムイオン内包フラーレン(Li+@C60)と様々な電子ドナーを組み合わせることにより超分子電荷分離システムの構築とその電子移動特性についての評価を行った。これまで私は電子ドナーとしてアニオン性ポルフィリンであるH2TPPS4-を組合せることにより、イオン間相互作用及びπ-π相互作用によって極性溶媒中でも安定な超分子が形成されることを見いだしている。またその電荷分離寿命は非共有結合のモノマーポルフィリン/フラーレン超分子系では最長寿命となる310μsであった。このLi+@C60をLi+@PCBMに置き換えると、その電荷分離寿命はH2TPPS4-/Li+@PCBM超分子で450 μs、ZnTPPS4-/Li+@PCBM超分子で560 μsとなり、Li+@C60の場合よりも長寿命の電荷分離状態を得ることができた。Li+@PCBMはLi+@C60よりも還元電位が0.1 V低く、より高エネルギーの電荷分離状態を得ることが出来た。電子ドナーとしてアニオン性フリーベースフタロシアニンを用いた場合、Li+@C60は混合溶媒(ベンゾニトリル:ジメチルスルホキサイド(v/v) = 1:1)中において1:2の超分子を形成した。またその錯形成定数は約10^12 M-2と、ベンゾニトリルよりも極性の高い混合溶媒中においても安定な超分子を得ることができた。その超分子の電荷分離寿命は1.0 msとなり、アニオン性ポルフィリン/ Li+@C60超分子の場合と比べ、約3倍長くなった。 これらの超分子のほとんどは、その超分子内で三重項の電荷分離状態を生成することが分かった。またHOMO-LUMOの重なりが小さいなどの理由からエレクトロニックカップリングが非常に小さくなり、電荷分離状態が長寿命であることを見出した。これらの電荷分離状態の長寿命化への知見は「リチウムイオン内包フラーレンを用いた酸化還元複合光触媒システムの構築」にあたり重要な研究テーマである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の初期段階であるリチウムイオン内包フラーレンを電子アクセプターとする超分子系の電荷分離システムの構築に関する研究が順調に進展するとともに電荷分離寿命の長寿命化に関する知見を得ることができた。従来の電荷分離システムで採用される設計指針では、逆電子移動過程のドライビングフォースを再配列エネルギーよりも大きくし逆電子移動過程をマーカスの逆転領域に位置させるものであった。私の研究では再配列エネルギーとともに電子移動速度定数に影響を及ぼすエレクトロニックカップリングに着目し、またこの値が超分子系の電荷分離システムでは小さくなり長寿命電荷分離状態を与えることを明らかにした。これらの成果は原著論文として8報掲載された。またこれまでの成果は総説としてChem. Asian J. に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
リチウムイオン内包フラーレンを用いた酸化還元複合光触媒システムを構築し、太陽エネルギーを利用して効率よく過酸化水素などを製造するためには、電荷分離状態生成を高い量子収率と長寿命で得る事が不可欠である。そのため、より高い量子収率と寿命を有する電荷分離システムの構築を引き続き行う。また最終的には水中での酸化還元複合光触媒システムの構築を目指しているので、J. Phys. Chem. B in press. (DOI: 10.1021/jp5123163)で行ったような極性の高い溶媒中での電荷分離システムの構築を行う。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Long-Lived Charge-Separated States Produced in Supramolecular Complexes between Anionic and Cationic Porphyrins2014
Author(s)
Bill, N. L.; Ishida, M.; Kawashima, Y.; Ohkubo, K.; Sung, Y. M.; Lynch, V. M.; Lim, J. M.; Kim, D.; Sessler, J. L.; Fukuzumi, S.
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Journal Title
Chem. Sci.
Volume: 5
Pages: 3888-3896
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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