2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J00668
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉山 真吾 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 相対跡公式 / 保型表現 / モジュラー形式 / 保型L関数 / 周期積分 |
Research Abstract |
本年度はHilbertモジュラー形式の保型L関数の中心値について(1)レベルに関する平均の漸近公式、(2)非ゼロ性と保型形式のフーリエ級数の一様分布、(3)保型形式の2次ベースチェンジL関数の劣凸評価、(4)保型形式のHecke体の拡大次数の増大度と中心値の非ゼロ性、の成果を得た。本研究の結果(1)(2)(3)(4)は、相対跡公式と呼ばれる公式から導かれる。RamakrishnanとRogawskiはGL (2)の保型L関数の中心値に関する情報を取り出すために、Jacquetの相対跡公式のスペクトルサイドと幾何サイドを明示的に計算することによって、楕円モジュラー形式の保型L関数の中心値のレベルに関する平均の漸近公式を得た。後に彼らの結果はFeigonとWhitehouseによってレベルが平方自由な正則Hilbertモジュラー形式の場合に一般化された。その際、FeigonとWhitehouseはJacquetとChenの相対跡公式を明示的に計算したが、Jacquet-Langlands対応を本質的に使っているため、2次Hecke指標には依然としてすべての無限成分に条件が課されており、レベルも平方自由という条件に制約されていた。またHecke指標の無限成分の条件は、扱う積分の積分領域がコンパクトになるためにも必要な条件であった。本研究では保型Green関数と呼ばれる関数を導入することによって、Hecke指標の無限成分とHilbertモジュラー形式のレベルに条件を課すことなく一般的に計算する方法を編み出し、FeigonとWhitehouseの相対跡公式を拡張することに成功した。最初に述べた結果(1)(2)(3)(4)は上智大学の都築正男氏との共同研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初からの目標であったFeigonとWhitehouseの相対跡公式の一般のレベルへの拡張が実現した。また、FeigonとWhitehoueseの結果ではHecke指標が2次指標で無限素点の成分がすべて非自明の場合でしか計算されていないが、本研究で得られた相対跡公式は2次Hecke指標の無限素点が自明の場合も計算可能であり、Hecke指標が2次でなく自明の場合も適応可能である。以上の場合から順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
SerreやRoyerはEichler-Selberg跡公式を用いて、重さが2の楕円モジュラー形式のHecke体の拡大次数の増大度や保型L関数の中心値と中心微分値の非消滅を調べている。本研究でRoyerの中心値に関する結果のHilbertモジュラー形式への一般化は得られたので、中心微分値の結果も一般化するための新しい相対跡公式の導出に取り組む。ここで微分値の情報を取り出すために新しく周期積分を導入し、積分が発散する問題を解決するための「正規化」を考察する必要がある。この正規化がうまくいけば、GL (2)以外の代数群の相対跡公式を得るための足がかりとなると考えられる。
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Research Products
(8 results)