2013 Fiscal Year Annual Research Report
発芽種子の糖代謝プロファイリングに基づく根寄生雑草の新規防除法の開発
Project/Area Number |
13J00683
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
若林 孝俊 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 寄生植物 / ヤセウッボ / ノジリマイシン / 糖代謝 / メタボロミクス |
Research Abstract |
【ヤセウツボ発芽種子におけるプランテオース代謝経路の同定】ハマウツボ科の根寄生雑草は世界の農業に多大な被害を及ぼしている. 本研究ではヤセウツボを用いてヤセウッボ種子発芽過程において特異的な代謝経路を同定し, その経路を抑制することで発芽を選択的に阻害することを目的とした. ヤセウツボ種子のメタボロミクス分析の結果を解析したこところ, 発芽中に顕著に変動する代謝物として構造未知の三糖化合物が見出された. 三糖化合物の構造解析の結果, その構造をプランテオースと同定した. さらに糖加水分解酵素阻害剤であるノジリマイシン(NJ)により宿主の発芽には影響を与えることなくヤセウツボの発芽が選択的に阻害されることが明らかとなった. NJの作用点を明らかとするために, ヤセウツボの発芽種子およびNJ処理により発芽抑制された種子(NJ-種子)を用いて種子中に含まれる糖の分析を行った. 分析の結果, 発芽種子においては三糖プランテオースが発芽の進行に伴い減少することが明らかとなった. プランテオースを構成する二糖スクロースはプランテオース減少の後に減少することが明らかとなった. プランテオース及びスクロースの構成単塘であるグルコース, フラクトースはプランテオース, スクロースの減少に伴い増加していくことが明らかとなった. ガラクトースはプランテオースを構成する単糖であるが, 本分析では検出されなかった. このことから, プランテオースから遊離したガラクトースはガラクトキナーゼ等の作用により遊離後速やかに他の化合物に変換されたものと考えられる. NJ-種子ではプランテオース量は発芽種子同様に減少していたが, スクロースが種子中に大量に蓄積しており, その結果グルコース, フラクトース量は発芽種子と比較して減少していた. このことから, NJはプランテオース代謝経路中のスクロース分解を抑制し, 単糖の供給を妨げることで発芽を抑制していると考えられた. 本研究の結果, プランテオース代謝経路が根寄生雑草の発芽阻害のための新規なターゲットとして有効であることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヤセウツボ種子中でのプランテオース代謝という特徴的な代謝変動を明らかとした. さらに, ノジリマイシンが本代謝経路中のスクロース分解を阻害することで発芽を抑制していると強く示唆された.
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Strategy for Future Research Activity |
今回見出したノジリマイシンによるプランテオース代謝経路中のスクロース分解抑制による発芽阻害の分子機構を詳細に解析する. 植物中でのスクロース分解にはインベルターゼおよびスクロースシンターゼが関わっているためノジリマイシンの作用点として上記2種類の酵素が考えられる. そこでノジリマイシンがこれらの酵素活性を阻害するか否かを検証する。さらに網羅的にノジリマイシンの作用点を探索するために, 次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析を検討する. 本解析によりNJによって変動する遺伝子が明らかとなり, 阻害作用部位の推定が可能になることが予想される.
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Research Products
(3 results)