2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J00696
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大川 領 京都大学, 数理解析研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 導来圏 / 連接層のモジュライ |
Research Abstract |
3点上に2次の巡回群を安定化群として持つ重み付き射影直線の場合に、構造層のFrobenius射による押し出しについて、特にその直既約成分への直和分解を調べた。結果として標数が2の場合は1回の押し出しが直既約であることがわかり、また、さらに押し出しを複数回繰り返した時の直既約成分への分解を記述した。一方、標数が3以上の場合は、一回の押し出しが直既約でないことも分かった。 植田一石氏との共同研究では3次元特殊線形群の有限部分群Gによる射影平面の大域的商スタックについて、直線束からなる充満的な例外列が存在するための条件を調べた。結果として、Gがアーベル群であるという条件が必要十分であることが分かった。これらの結果を本研究課題において重要な代数多様体と箙表現との導来同値について理解を深めるための材料としたい。 その他の現在進行中の研究として、重み付射影直線上のベクトル束のモジュライスタックの仮想的ポアンカレ多項式の計算、また枠付きのクロネッカー箙の半安定表現のモジュライ空間上の交点数の計算を実行している。前者は箙表現のモジュライ空間の壁越え現象を解析することにより計算を試みる。これによって新たな知見が得られることを期待する。後者は射影直線上の連接層と切断との半安定な対からなるモジュライ空間上の交点数を壁越え現象の解析により計算する試みである。 さらに最近では、次数2のヒルツェブルフ曲面のルートスタック上の枠付き捻じれなし連接層のモジュライ空間上の交点数の計算にも取り組んでいる。モジュライ空間が滑らかでないと推測されるが、障害理論をより精密に用いることにより従来の方法が適用されると考えられる。これらの計算を通じて導来圏や各種の方法、特に壁超え現象を解析する方法について理解を深め、さらに代数曲面上の半安定層と導来圏についての研究を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、射影平面上の半安定層のモジュライ空間の構造を壁越え現象(安定性条件を変えることにより同一のChern類を持つ複数のモジュライ空間が得られる現象)を利用して、調べることである。今年度は次元の低い重み付き射影直線や、射影平面の商スタックの場合にその道来圏や壁越え現象の研究を行うことで、より複雑な高次元の場合の研究に向けて土台作りを始めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
重み付き射影直線の構造層のFrobenius射による押し出しについては、標数が3以上の場合にも直既約成分を決定することが課題である。射影平面の商スタックについては、Gがアーベル群でない場合に高階数のベクトル束からなる充満的な例外列を具体的に構成することが課題である。次数2のヒルツェブルフ曲面のルートスタックについては、偏屈層のモジュライ空間と箙表現のモジュライ空間との間の全単射の構成を試みたい。さらに、これらの結果により箙表現との導来同値についての理解を深め、安定層のモジュライ空間の壁越え現象について調べたい。
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Research Products
(3 results)