2013 Fiscal Year Annual Research Report
積層型芳香族アミンの電荷輸送特性の解明とデバイスへの応用
Project/Area Number |
13J00721
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
酒巻 大輔 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | アザアセン / 芳香族アミン / πスタック分子 / 電荷移動 / 構造有機化学 / 有機導体 / 量子化学計算 / 電気化学 |
Research Abstract |
本年度は、新規積層型共役系分子の開発を目指し、ペンタセンの6,13位が窒素原子で置換されたジアザペンタセンを鍵骨格とした分子群の合成を行なった。芳香族求核置換反応によって、2つのジアザペンタセンがオルトフェニレンを介して層状にスタックした構造を有する分子1の合成を試みた。その結果、目的化合物1が得られるとともに、ジアザペンタセンが二量化した分子2が生成した。X線単結晶解析によりこれらの構造決定に成功し、二量体2はジアザペンタセンの5位の炭素と6位の窒素が連結した十字型構造を有することが明らかになった。また、分子2はアセン骨格が直接十字型に連結した特異な構造を有しており、この分子を平面状誤役分子を介して連結することで、3つの平面状洪役系が積層した構造が構築できると考え、2つの分子2をビフェ1ニルをリンカーとして連結した分子3の合成を試みた。分子2と4,4'-ジブロモビフェニルに対してPd触媒を用いたクロスカップリング反応を行うことで、目的の分子3の合成に成功した。また分子3の単結晶構造解析にも成功し、予想どおり3つのzπ役系が積層した構造を有していることが明らかになった。ジアザペンタセン平面とビフェニル間の面間距離はおよそ3.3-3.4Åと近接しており、空間を介した電子的な相互作用が期待できる。実際に、分子3の蛍光測定から、励起状態1においてジアザペンタセンとビフェニルの間でエキサイプレックスを形成していることが強く示唆された。今年度の研究から、十字型分子2は坪面が多層化した三次元π役系を極めて簡便に構築できるビルディングブロックであることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに合成してきた積層型芳香族アミン群に対して、TRMC法による電荷移動度特性評価をひと通り行なうことができた。現在は得られたデータを元に構造-物性相関について考察をおこなっている。また、新規積層型分子として、レイヤーにアザアセンを用いた分子群の合成に成功した。特に、新たな積層型分子構築のビルディングブロックである、アザアセンが十字型に二量化した分子の合成は予想外の成果であり、今後の発展が期待される。以上より、研究は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から、今回合成したアザアセンの十字型二量体を用いることでパイ共役系が三層積層された分子が容易に構築できることが明らかになった。今後は、この十字型分子を活用して種々の積層型分子の合成をおこない、その電子的性質を明らかにしていく予定である。特に、スタックした面間における空間を介した電荷移動に重点をおいて研究を進めていく。
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Research Products
(12 results)