2013 Fiscal Year Annual Research Report
単一分子検出感度を有する近接場ラマンプローブの開発とナノ分析イメージングへの応用
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13J00730
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
馬越 貴之 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 近接場光学顕微鏡 / プラズモニクス / ラマン分光 / 光還元法 |
Research Abstract |
本研究は、近接場ラマン顕微鏡の検出感度・空間分解能向上を目的としている。検出感度・空間分解能は金属ナノプローブ先端のサイズや形状に大きく依存するため、サイズや形状の制御性に優れている光還元法を用いて所望の金属ナノプローブの作製を試みた。当該年度の研究成果は以下の通りである。 (1)溶液濃度による先端形状の制御 近接場ラマン顕微鏡は、金属ナノプローブの先端で自由電子の集団振動を励起、局在増強電場を生成することで高感度・高分解能を達成する。電場の局在性と増強度をより高めるためには、ナノロッドやナノトライアングル、ナノ立方晶などの先鋭な構造が望ましい。光還元法では、硝酸銀溶液にレーザーを照射することによって、硝酸銀から生成される銀イオンが銀原子に還元されることを利用し銀構造を作製するが、私は硝酸銀濃度が低い程先鋭な銀構造が作製されることを見出した。硝酸銀濃度5×10^<-3>mol/Lの溶液にシリコンカンチレバーを浸し光還元を誘起し、先端に複数の銀ナノロッドを作製した。この金属ナノプローブは高い検出感度と空間分解能を持つと期待できる。 (2)銀構造の表面粗さによる検出感度・空間分解能の向上 光還元法によって作製された銀構造は20nm程度の表面粗さを有する。この表面の細かな構造が電場の局在化に大きく寄与することを、電磁場計算によって見出した。200nmの銀ナノ粒子に、20nmの表面粗さを付加したものと真球のものの電場分布を比較すると、電場の局在化により、粗い銀ナノ粒子の方が約5倍高い空間分解能を示した。また、電場の局在化により電場強度も増加した。近接場ラマン顕微鏡の検出感度・分解能の向上に辺り、新しい金属ナノプローブのモデルとなりうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有限差分時間領域法(FDTD法)により、高感度・高分解能な金属ナノプロープのモデルを見出しつつ、実験的に金属ナノプローブ先端の形状制御方法を見出すことを本年度の目的としていたが、FDTD法により表面粗さが上記の目的に有効的に活用できることを見出し、硝酸銀濃度を変えることによって銀構造の形状を制御できることを実験的に示すことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
光還元法にキャッピング剤を用いることによって、さらに精細に形状を制御できるため、溶質の組み合わせ・濃度等より詳細に精査する。また、検出感度の向上には、シグナルの増強とノイズの低減の二つの方針が考えられる。現在は局在電場の増強によるシグナル増強に取り組んできたが、今後はノイズの低減も視野に入れ検討していく。
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Research Products
(6 results)