2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J00743
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
吉野 宏志 筑波大学, 大学院人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アフロアジア語族 / 東クシ語 / フィールドワーク / 比較言語学 / 言語類型論 / 国際情報交換 / エチオピア |
Research Abstract |
平成25年度はフィールドワークによる言語資料の収集と分析を中心に研究を行なった。研究計画に則り、エチオピア連邦民主共和国へ2度渡り、文献資料に乏しい少数民族の言語であるアッレ語(アフロアジア語族クシ語派東クシ語群)の調査研究を行なった。1回目の調査ではアッレ語の2方言(高地方言、低地方言)について基礎語彙1700語の音声資料を獲得し、2回目の調査では低地方言における重文や複文などを用いた文例を収集した。アッレ語にはアムハラ語(エチオピア・セム語群)や他のクシ系言語で見られる副動詞が存在しないことは既に知られていた。しかし、これらの言語で副動詞を用いる表現をアッレ語で表す際、重文と同じ構文を用いるか、主動詞のイベントに付随するイベントを不定詞に名詞の格標識を付加した表現によって表す構文を用いることが、2回目の調査で新たに確認された。 また、アッレ語の調査と平行して東クシ語群に特有と考えられている状態動詞活用(Sative jugation)とエジプト語(アフロアジア語族エジプト語派)sdm-f活用の類似について分析を試みている。両者は同じ語族に属しているため比較言語学的方法が可能とは考えられるが難航しているため、通言語的な「属格主語」という言語類型論的枠組みから分析を行なっている。今現在、未だ決定的な結論には至っていないが、状態動詞活用とsdm-f活用は、共時的な類似に留まらず、通時的にも発達過程が比較可能である可能性が示唆されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エチオピアでの調査によるアッレ語一次資料の獲得は順調に進んでいる。その他の東クシ諸言語の資料収集についても着実に進んでいる。分析については主眼にある比較言語学的方法だけでなく、通言語的な視点から言語類型論の枠組みなどを取り入れることで新たな見識が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きエチオピアでの調査を行い、アッレ語の動詞活用のより詳細な記述を行なう。アッレ語を含む東クシ諸言語を網羅的に調査し、東クシ祖語における動詞活用体系の再建形の提案を試みる。またアフリカ諸語や言語類型論の研究成果や枠組みを用いて再建形の妥当性を自ら検討する。
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Research Products
(2 results)