2014 Fiscal Year Annual Research Report
報酬に基づいた運動・感覚の抽象化によるミラーニューロンシステムモデル
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13J00756
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
河合 祐司 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミラーニューロンシステム / 生体運動検出 / 言語発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクト二年次の研究では,新生児期に持ちえる生体運動検出能力を発達早期のミラーニューロンシステムと位置付け,その計算モデルを提案した.また,ミラーニューロンシステムの発達と関係の深いとされる言語発達をモデル化することで,より後期のミラーニューロン発達モデルの足がかりとした.これら二つの認知発達モデルについて「発達,学習,およびエピジェネティックロボティクスに関する国際会議」で発表した. 認知発達科学の観察的研究から,視覚経験のない新生児であっても生体運動の視覚刺激に選好を示すことが報告されている.本モデルでは,自己の滑らかな四肢運動の運動指令を抽象化することによって得られた表現を基準として,新生児は観察対象の運動から生体運動の滑らかさを検出しているという仮説を立てた.生物学的に妥当な前提条件の下での,ニューラルネットワークによる生体運動の抽象化,および生体運動検出実験の結果,上記の仮説は受容された. 本プロジェクトでは運動の時系列情報を抽象化することによって自他の区別のない運動表象,すなわち,ミラーニューロンシステムが得られるとしている.そのアナロジーとして文法獲得が考えられる.品詞といった文法知識としての抽象表現を通して文を生成したり,理解したりするため,言語とミラーニューロンシステムには共通したメカニズムがあるとされる.幼児は三歳から五歳にかけて,名詞や動詞といった品詞を理解し始めるといわれている.提案するモデルではこの発達早期の文法獲得の計算モデルを隠れマルコフモデルによりモデル化した.隠れマルコフモデルに語列を入力し学習すると,その隠れ状態には品詞が表現される.そして,隠れ状態数を増加させることで,隠れ状態の表現能力を向上させ,これが幼児の発達に対応するとした.シミュレーションの結果,提案モデルは三歳から五歳の幼児の言語発達を再現することが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年度の主たる成果として,発達初期のミラーニューロンシステムとしての生体運動検出モデル,および,より発達後期のミラーニューロンシステムのアナロジーとしての言語発達モデルの提案がある.それぞれのモデルについて国際・国内会議で発表しており,精力的な研究活動が伺える.また,現在,国際学術雑誌への投稿を目指し論文執筆中であるため,期待通りに研究が進められているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果についての論文2本を学術雑誌に投稿予定である.また,それぞれのモデルについて,より高度な工学的技術を用いたモデルのブラッシュアップや,ミラーニューロンシステムに関するより深い学際的議論をする予定である.
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Research Products
(4 results)