2013 Fiscal Year Annual Research Report
障がいを持つチンパンジーにおける認知実験のリハビリテーションへの応用
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13J00801
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
櫻庭 陽子 京都大学, 霊長類研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | チンパンジー / リハビリテーション / 身体障害 / 動物福祉 / 認知課題 / モチベーション |
Research Abstract |
本研究は、飼育下の身体障がいを持ったチンパンジーに対してリハビリテーションを施すことで、運動機能の回復とともに福祉の向上を目的とし、かつ認知課題を用いて動物の自発的な行動を引き出し、介護をする人間の負担も減らせる可能性があるという点でも意義のある研究である。本年度は24時間のビデオ観察及び認知課題を利用したリハビリテーションのモチベーション要因分析の継続をおこなった。さらに、名古屋市東山動物園において病気によって左上腕の切断手術を施されたチンパンジーが群れに復帰するという情報が入ったため、群れ復帰の様子をビデオと目視による観察をおこなった。群れ復帰の経過とチンパンジーたちの様子に関して詳細な記録を得ることができた。この観察により、人のリハビリテーションの目標の一つである「社会復帰」を、チンパンジーでもデータを得ることができ、今後社会復帰を目指す身体障がいを持つチンパンジーの目標のひとつともできる。そのチンパンジーは無事に群れにもどり普段の生活をしているが、現在も観察を継続し、身体障がいがもたらす弊害や他個体との関連に関してデータ収集と分析を続けている。また本年度は複数の国際学会等にて修士研究でおこなってきた認知課題を用いたリハビリテーションの導入と評価に関する発表をおこない、国内外のさまざまな分野からの意見をもらった。特に大変興味を持つ方がいる一方、症例研究からの脱却について今後考えていかなければならないことも再認識することができた。また理学療法士やコンパニオンアニマルの理学療法をおこなっている方ともお話をする機会があり、理学療法やコンパニオンアニマルにも目標設定やモチベーションに関する問題があることが分かり、本研究がこのような分野でも重要な知見をもたらす可能性が高いことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り継続して分析を進めており、学会発表においてさまざまな知見を得ることができた。さらに名古屋市東山動物園における観察により、他個体の事例に関する情報を得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は分析結果をまとめ、論文投稿を目指す。また、現在までは現存するリハビリテーションの評価をおこなってきたが、新たなリハビリテーションの導入及びストレスホルモンを指標とした分析もおこない、運動機能の改善とともに動物福祉にも重点をおいた評価をおこなう。
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Research Products
(6 results)