2013 Fiscal Year Annual Research Report
ナノレベルの局所的拡散特性抽出に基づく水-有機液体系の濡れ機構の分子動力学解析
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13J00807
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
SURBLYSI Donatas 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 濡れ性 / 界面張力 / 水-アルコール混合物 / 液滴 |
Research Abstract |
水とアルコールを混合した液滴の固体壁面上における濡れ性挙動を取り上げ, 分子動力学法によるナノスケール解析のシミュレーションを行った. アルコール成分としてIPA(イソプロピルアルコール)及びメタノールを使用し, それらを水の液滴に添加することによる濡れ性の変化を解析した. メタノールとIPAは分子鎖の観点からは大きく違わないにも関わらず, 水に対する混合特性は大きくことなることが分かった. これについて, 分子構造が混合特性に与える影響に関する考察を行い, IPAとメタノールの相違の原因を明確にした. また, 固液と気液界面におけるアルコールの局所的な吸着状態に注目し, 詳細な解析を行った. 界面におけるアルコールの吸着状態をアルコールの相対吸着量を用いて表すことで, 界面状態の定量化に成功した. この結果を踏まえ, 固液, 気液, 固気各々の間の界面張力を別個に作成し平面状の液膜系を用いて算出し, 相対吸着量によって液滴系と照らし合わせた結果, 液滴系で観測される接触角と, 接触角の三相界面での釣り合いを表すYoungの式から導かれる接触角が概ね一致した. これに加え, 固液界面の張力の算出方法の不確かさを見積もるため, 熱力学的積分を用いた方法によって別個に確かめ, 研究結果の妥当性の確認ができた. これらの成果を査読付き国際学術誌で発表したほか, 国際学会を含む複数の学会で発表し, その中の国際学会のHTFFM-Vでポスター賞を受賞した. これらのナノスケールの解析により, 異種液体の接触気液, 固液界面に与える影響が明らかになり, 混合物の濡れ性挙動に関する新たな知見が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一段階であった気液・固液界面における表面状態を表すパラメータの抽出ができ、異なる系の状態の抽出と異なる系の間の比較, 照合が可能となり, 研究が大きく進展した. 更に、第二段階の水-IPAと大きく異なる水-メタノールの混合系の作成ができ, 研究が単一の混合系に限られたものではなく, より一般的な系にも成り立っていることを証明できた. これらは概ねに当初の計画通りである.
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Strategy for Future Research Activity |
現段階では, アルコール添付による各界面エネルギーというマクロ的な物性の遷移を捉えることに成功し, マクロ的な液滴と同様, 濡れ性がこれらの界面エネルギーの関係から決まることを確認できた. 次の段階では分子そのものに焦点を当て, 混合による界面における分子の構造や動的な性質の変化の観察を行い, それらと界面エネルギー, ひいては濡れ性の変化の因果関係の検証を行う. また, 気液界面の張力の算出方法の不確かさも見積もり, 既に行った固液界面の見積もりを補完することで, より確実な誤差の算出を可能とする.
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Research Products
(7 results)