2013 Fiscal Year Annual Research Report
電子相関が生み出す新奇なトポロジカル絶縁体・超伝導相の理論的研究
Project/Area Number |
13J00815
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
塩崎 謙 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | トポロジカル超伝導体 / アクシオン / トポロジカル結晶絶縁体・超伝導体 / ゼロモード / ディラック・フェルミオン |
Research Abstract |
本課題においては、物性物理学におけるトポロジカル秩序相、特に相互作用系のトポロジカル相の基本物性の理解を目的としている。本年度はこれに関連し、以下の研究を行った。(1)トポロジカル超伝導体における動的アクシオン効果。トポロジカル絶縁体において、運動量空間の非自明なトポロジーに起因し、アクシオン電磁気学が実現することが知られている。特に、軌道間秩序の縦ゆらぎが動的アクシオン場を誘起し、新奇な電磁気現象の実現が予言されている。本研究ではトポロジカル超伝導体における動的アクシオン効果について、先行研究で得られていたアクシオン場と角運動量・温度勾配場との結合を動的領域まで仮定し、アクシオン熱輸送現象を議論した。その中で、トポロジカル超伝導体における動的アクシオン場の実現にはスピン軌道相互作用の存在が重要であることがわかった。また、動的アクシオン現象として、有限の温度勾配下において慣性モーメントが超伝導体の振動回転に応じて増大することがわかった。(2)鏡映対称性、2回回転対称性、反転対称性などorder-twoの点群の対称性によって守られたトポロジカル結晶絶縁体・超伝導体の完全な分類。トポロジカル結晶絶縁体・超伝導体とは結晶の空間群の対称性によって守られたフリー・フェルミオンのトポロジカル相である。空間群と時間反転粒子・反粒子反転対称性が絡み合うことにより、独立なトポロジカル・クラスは数千種類も存在し、固体物質のトポロジカル分類表の確立に向けて、網羅的かつ系統的な分類方法を見出すことが重要である。本研究では、任意次元のorder-two (2回で元に戻る)点群の対称性に対するトポロジカル結晶絶縁体・超伝導体の完全な分類を行った。結晶の対称性を考慮しないトポロジカル絶縁体・超伝導体の分類においては、異なる10通りのトポロジカル・クラスと空間次元との間に階層性が存在することが知られているが、order-twoの点群の対称性についても類似の階層性が存在することが分かった。また同時に、order-twoの点群対称性に守られた、渦糸などの欠陥に局在するゼロ状態、及び、安定なフェルミ点の分類も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の目的は、相互作用によって実現するトポロジカル相、特に高次元トポロジカル秩序相の基本物性を解明することであった。本年度はその前段階として、超伝導体の動的アクシオン現象、トポロジカル結晶絶縁体・超伝導体の分類に関する結果を得ることができたが、高次元トポロジカル秩序相の基本物性に関して明確な結果を得ることは出来なかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
相互作用系のトポロジカル相、特に、トポロジカル秩序相における集団励起、バルク・境界対応などについて、既に得られている結果をまとめると共に、詳細な解析を進め、本研究を完成させる。また、固体物質固有の結晶対称性によって保護されたトポロジカル相に関して、今年度得られた結果を元にその基本物性をさらに詳しく調べる予定である。
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Research Products
(7 results)