2013 Fiscal Year Annual Research Report
紀元後5世紀イロパンゴ火山噴火前後のメソアメリカ太平洋沿岸部の生業と社会の研究
Project/Area Number |
13J00824
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
市川 彰 国立民族学博物館, 特別研究員PD
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Keywords | メソアメリカ / イロパンゴ火山 / エルサルバドル / マヤ / 考古学 / 生業 / 製塩 / 年代測定 |
Research Abstract |
本研究の目的は、①先古典期から古典期にかけてのメソアメリカ太平洋沿岸部の製塩活動と社会の実態を解明すること、②イロパンゴ火山噴火が沿岸部社会に与えた影響を解明すること、以上の2点を総括し、③紀元後5世紀イロパンゴ火山の巨大噴火前後のメソアメリカ太平洋沿岸部の生業と社会の特質について考古学的に明らかにすることである。 【イロパンゴ火山噴火の年代とインパクトに関する研究】 火山灰との前後関係が明瞭なチャルチュアパ遺跡出土の建造物と土器を分析し、噴火年代は紀元後400~450年頃、火口から西約80kmに位置するチャルチュアパでは従来の研究が示すような壊滅がおきるほどのインパクトはなかったことを確認した。また、火口から東に約55km離れたヌエバ・エスペランサ遺跡調査成果を検証したところ、噴火時に避難する猶予が存在したことがわかった。 【ヌエバ・エスペランサ遺跡の考古学調査】 イロパンゴ火山灰に覆われた太平洋沿岸部集落であるヌエバ・エスペランサ遺跡の考古学調査をおこなった。その結果、当該地域では初となる高さ約2m、長さ約70mの人工の土製マウンドを発見した。これらは大量の粗製土器片、炭化物、焼土片からなる。 【エルサルバドル太平洋沿岸部集落における20世紀の製塩活動に関する調査】 調査地域で近年まで存在した、つまりすでに消失してしまった塩田での製塩活動に関する聞き取り調査を実施した。塩田跡地の記録、製塩方法および当時の経済状況などについて記録することができた。また、別の村落で、塩田による製塩活動以前におこなわれていた製塩方法、つまり鉄釜を用いた製塩活動に従事していた人物に聞き取り調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究目的は、野外調査を通じてメソアメリカ太平洋沿岸部集落における民族および考古資料の獲得すること、これまでの調査成果を国内外で発表することであった。前者については、メキシコの比較資料を獲得することはできなかったが、エルサルバドルで火山噴火に関するデータと古代の製塩活動に関する貴重な民族・考古学的一次資料を獲得することができたことは収穫であった。後者については、マヤ国際会議での口頭発表した他、和文学術誌「貝塚」への掲載が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度におこなった野外調査をもとに、さらに継続して野外調査をすすめる。とくに発掘調査をおこなって、沿岸部集落の生業と社会を明らかにするための一次資料を獲得する。現在、前年度までの調査すでに得られていた人骨と炭化物の放射性炭素年代測定、炭素窒素安定同位体分析をおこなっており、こうした自然科学的データと考古学的データを接合して、メソアメリカ太平洋沿岸部集落の実態を明らかにしていく。
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