2013 Fiscal Year Annual Research Report
ボリル金属種の特異な性質を利用した新規不活性分子活性化法の開発
Project/Area Number |
13J00827
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
衣田 裕孝 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ボリル金属種 / ロジウム触媒 / DFT計算 / 炭素-酸素結合切断 |
Research Abstract |
ボリル金属種は、ボリル配位子の持つ強い電子供与性や、ホウ素上に空軌道を持つことなどから、従来の有機金属種とは異なる極性を有する化学種である。しかし、このような化学種の触媒的な利用は炭素-水素の活性化以外にほとんど例が無く、先述したボリル金属種の特異な性質を生かした反応はこれまでに報告されていない。 したがって最初に、以前われわれが報告した、炭素-シアノ結合切断を経る触媒的ボリル化反応におけるボリルロジウム種のはたらきを明確にするため、DFT計算を用いた検討を行った。その結果、通常の酸化的付加機構とは全く異なる、ボリルロジウム種特有の機構を経て反応が進行する事を明らかにした。具体的には、ボリルロジウム種が金属アニオン等価体としてはたらき、シアノ基へ付加する事でイミノアシル中間体を形成し、そこからボリルイソシアニドの脱離が進行する、という二段階の機構を経て困難な炭素-炭素結合の切断が起こる事を明らかにした。 次に、DFT計算により明らかになった、ボリル基が求電子的、金属中心が求核的にはたらくというボリル金属種の性質を利用し、分子内官能基のボリル基への配位を起点とする不活性結合切断反応の開発に着手した。様々な検討の結果、ピバル酸2-ナフチルとジボロンとを、ロジウム触媒と適切な配位子存在下、トルエン中130℃で反応させる事で、アリール-酸素結合が切断され、目的のナフチルボロン酸エステルを収率78%で得た。続いて、最適条件で基質の検討を行った結果、フェナントレンやキノリンなどの芳香族基質に加え、ビニルピバレート誘導体も本反応に適用可能であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題であるボリル金属種の特異な性質を利用した新規不活性分子活性化法の開発に向け、DFT計算を用いた炭素-シアノ結合活性化反応の機構研究を行った結果、一般的な酸化的付加機構とは全く異なり、ニトリルへの付加を経る二段階機構で進行する事を明らかにした。この反応機構は、一般的な有機金属種とは潜在極性が異なるというボリルロジウム種特有の性質が顕著に表れた例である。また、ここから得られたボリルロジウム種の性質に関する知見を生かし、新たな反応を設計する事で、エステル類の強固な炭素-酸素結合の切断を経る新たなボリル化反応を見出した。これらのことから、おおむね順調に研究が進展したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、本研究課題の目的である、ボリル金属種の特異な性質を生かした反応開発に向け、DFT計算を用いたニトリルの炭素-シアノ結合切断反応におけるボリルロジウム種の働きを明確にし、さらに、そこで得られた知見を生かす事で、エステル類の炭素-酸素結合の切断を経るボリル化反応を見出すことができた。今後は、さらに不活性な炭素-酸素結合を持つエーテル類を用いた反応を行う予定である。また、二酸化炭素などの不活性分子をポリル金属種で活性化する過程を含む触媒反応の開発にも展開していきたいと考えている。
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Research Products
(3 results)