2013 Fiscal Year Annual Research Report
エレクトロスピニング法を用いた傾斜機能性材料の開発と再生医療への応用
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13J00887
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森山 真樹 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 高分子ミセル / 血管新生 / 活性酸素種 / 抗酸化作用 |
Research Abstract |
ナノファイバーとナノ粒子を用いたハイブリッド型の新規バイオマテリアルの作製と医療応用を目的としている。近年、活性酸素種(ROS)が血管新生のシグナル伝達物質として密接に関与することが明らかとなった。このため、ROS消去能をもつ低分子薬物(抗酸化物質)による血管新生制御が注目を集めている。そこで抗酸化能力が高いカテコール構造を持つdopamineをコアに有する抗酸化ミセルを調製し、その抗酸化能および血管新生抑制作用を評価した。 poly (ethylene glycol)_<227>-b-poly (dopamine)_<60>よりなる両親媒性ジブロックコポリマーを可逆的付加開裂連鎖移動重合により合成した。このポリマーは水に分散すると自己組織化により約50nmの球状粒子を形成した。PBS (pH7.4、37℃)中における安定性を過酸化水素(H_2O_2)除去能により評価したところ抗酸化ミセルは2日間にわたって高い抗酸化能を維持しており、dopamineに比べて安定であることが確認できた。また、血管新生阻害能をヒト血管内皮細胞におけるチューブ形成アッセイを用いて評価したところdopamineの添加においては明らかな効果は認められなかったが、抗酸化ミセルの添加によりチューブ形成の阻害が確認された。さらに細胞内におけるROSを観察すると、抗酸化ミセルを添加した細胞においてはほとんど観察されず、細胞内ROSが効率よく消去されていることが分かった。これらの結果より、抗酸化ミセルによるチューブ形成阻害作用は、その優れたROS消去能に起因することが示唆された。そして鶏卵の胚の成長に伴う血管新生評価法である鶏卵漿尿膜法を用いて評価したところ、抗酸化ミセル添加により大きな毛細血管欠損部位が認められた。このことより、抗酸化ミセルは生体に近い環境下においても高い血管新生抑制作用をもつことが確認できた。以上の結果から、抗酸化ミセルはROSを効果的に消去することにより、優れた血管新生抑制作用を示すことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに機能化ナノ粒子を調製することに成功し、その効果により血管成長を制御することに成功している。本来、DNAなどを粒子に内包させることで細胞を制御することを考えていたが、より簡潔な抗酸化作用のみによって制御することに成功した。進展状況としては、おおむね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本来、骨などに応用可能な材料を検討していたが、より研究としての発展の可能性が大きい血管に注目した。血管は組織成長において欠かせないものであり、その分布や量を制御できれば医療用材料の研究において大いに役立つと考える。今後は傾斜機能性材料と組み合わせることで相乗効果によるさらなる血管成長の制御を試みる予定である。また、血管成長と癌についても注目している。癌組織においても血管は成長や転移のために不可欠であり、血管成長を制御することによる癌治療が提案できると考える。さらに抗酸化ミセル内に抗癌剤を内包させることで、より効果的なものとなると考える。今後は血管成長制御に注力し、医療用材料および癌治療への応用を試みる。
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Research Products
(5 results)