2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J00901
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
加藤 孝基 早稲田大学, スポーツ科学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | TMS / 協調運動 / 運動抑制 / 運動制御 / リラックス |
Research Abstract |
2013年度は、"筋の弛緩が他肢に及ぼす影響"を二つの実験により解明した。実験1では同側手足を対象にして皮質内抑制について、実験2では対側手足を対象として皮質脊髄路興奮性の点から明かにした。実験1においては、二連発磁気刺激法(Paired-pulse TMS)を用いて、足関節筋弛緩時の、手関節筋を支配する大脳皮質内抑制機構を明らかにした。その結果、足関節筋の弛緩直後に手関節伸筋の皮質内抑制が安静時に比べ上昇することが明らかになった。また、手関節屈筋の皮質内抑制は変化しないことが明らかになった。したがって、足関節筋の弛緩により手関節伸筋を支配する大脳皮質の抑制ニューロンが活性化することが示唆された。実験2では、対側の手足を対象にし、右足関節筋の弛緩が左手関節筋を支配する皮質脊髄路興奮性に及ぼす影響を明らかにした。その結果、左手関節伸筋において、足関節筋の弛緩直後にMEPが安静時に比べて低下することが明らかになった。また、左手関節屈筋は変化しないことが明かになった。したがって、足関節筋の弛緩は、対側手関節伸筋の皮質脊髄路興奮性を低下させることが示唆された。 以上の2つの実験より、足関節筋を弛緩する時には、同側および対側の手関節伸筋の皮質脊髄路興奮性が低下し、さらに、同側においては皮質内抑制の上昇が皮質脊髄路興奮性の減少に寄与する可能性を示している。スポーツ現場では、リラックス(弛緩)の重要性が常々問われているが、リラックスが難しいとされる要因のひとつに、"ある肢を弛緩すると、他肢が弛緩しづらくなる"という要因があるのかもしれない。本研究で得られた結果は、スポーツ現場における"なぜリラックスは難しいのか"といった疑問を紐解く重要な知見となるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初行う予定であった2実験を行い、新たな知見や結果を得ることができた。 それを受けて次の実験を計画しているため、おおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果をもとに、今後は機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、より高次な脳活動を明らかにする実験を行う。収縮と弛緩を同時に行うときの脳活動を特定することで、2つの動作を同時に行うときに特異的な脳活動領域を特定できるだけでなく、収縮と弛緩の相互作用を明らかにすることができる。また、脳領域間での機能的ネットワークを解明するために、近年開発された手法(Dynamic causal Modeling 解析)を用いて、収縮と弛緩に関わる脳領域間の相互作用を検討する。これにより、脳のどの部位がどの部位に影響を及ぼしているのか明らかにすることができる。
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