2013 Fiscal Year Annual Research Report
ドレスト光子によるシリコン広帯域発光・受光デバイス機能の両立発現
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13J00905
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 肇 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ドレスト光子 / シリコン / レーザー / LED / 受光素子 |
Research Abstract |
本年度はドレスト光子によるシリコンレーザーのさらなる高性能化に向けて研究を行った。シリコンレーザーの基本的デバイスは本研究室のグループらが実証しているが、さらに高効率化を図るために閾値電流密度低減を目標に設定した。その設計指針を得るために、これまでに研究を行った光増幅型のシリコン光検出器を用いて、微分利得係数を評価した。この微分利得係数をもとに、既に実現したシリコンレーザーの構造に当てはめて、閾値電流密度を導出したところ2.6kA/㎠となり、シリコンレーザーの閾値電流密度を実際に測定した値である1.1-2.0kA/㎠と近い値を得た。これにより、光増幅型のシリコン光検出器を用いた微分利得係数の評価が妥当であることと、光電変換においてドレスト光子が関わっていることを示した。 この微分利得係数を用いて、閾値電流密度が従来の1.1-20kA/㎠(これは従来の直接遷移型半導体レーザーの閾値とほぼ同等)から9.2A/㎠へと大きく低減可能な構造を見出した。閾値電流密度の低減には光閉じ込め係数が大きく関与しており、有効屈折率法を用いて、高い光閉じ込め係数を得るような構造を検討した。その結果、レーザー作製に用いる基板をシリコン基板からSOI基板へ変更し、デバイス層の厚みを15ミクロンとすることで高い光閉じ込め係数が実現できることがわかった。このレーザー構造はリッジ型導波路を採用しており、このリッジ幅を8ミクロンとすることで、シングルモード発振が可能で高いコヒーレンス性を持ち、通信用途にも応用可能となる。 設計後は、デバイス作製のためのプロセスの最適化を行った。SOI基板のpn接合を形成するとともに、空乏層部がドレスト光子の発生源となるように700keVの高い加速度電圧でイオン打ち込みを施した。導波路構造作製に関しては汚染を防ぐためにドライプロセスを中心として、EB描写、ICP-RIE、スパッタリング、プラズマCVD、ステルスダイシングを用いて、設計通りのリッジ導波路型レーザー構造の作製が完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シリコンによるレーザー構造を実際に作製するための、加工装置の加工条件を見出すことが出来た。その結果、設計通りの構造が作製できた。また設計の変更も柔軟に対応できるため、素子の作製に関して懸念材料がなくなり、原理検証に十分時間をかけることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は実際に作製した構造によってシリコンレーザー発振の閾値電流の低減を確認する。そのためにはレーザーを用いたアニール条件を最適化し、さらにはこの最適化にもとづき不純物分布を高い制御性をもって制御する。またその評価方法を考案する。現在の評価案として、アトムプローブとSIMSを用いて不純物分布の評価を行おうとしているので、この方法を手がかりとして研究する。
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Research Products
(2 results)