2013 Fiscal Year Annual Research Report
宿主・寄生者の共進化の数理的研究:移動分散と宿主操作から,多様化へ
Project/Area Number |
13J00914
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
入谷 亮介 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 移動分散 / 宿主・寄生者共進化 / 血縁選択 / 協力行動の進化 / 宿主操作 |
Research Abstract |
数理モデルを用いて宿主・寄生者の多様化のメカニズムを、空間的な観点や、局所適応という観点から、研究を遂行して参りました。まず、進化モデルを用いて、寄生者に感染した宿主の移動行動が受ける選択圧を理論的に定式化し、どういった条件で感染した宿主と未感染の宿主との移動行動に差が見られるのかを予測しました。すると、移動行動の後に水平感染が起こることによって、移動行動に関する応答規準の可塑性が進化するということがわかりました。具体的には、感染宿主ばかりが移動するような遺伝子型と、未感染宿主ばかりが移動するような遺伝子型とが共存するということがわかりました。このことは、寄生者が共に移住することで空間的に広がっていくいっぽうで、宿主が移動しないことで寄生者が空間的にクラスターを形成するという可能性を示唆します。寄生者の局所適応について考えた場合、移動するような宿主に寄生すること、あるいは移動しないような宿主に寄生することによって、寄生者の適応ダイナミクスに大きな差が生まれる可能性を示唆します。いっぽう、宿主の適応に注目した場合、宿主集団の空間的な細分化が見られる場合には、「血縁者に病気をうつす」という可能性があるため、包括適応度上は「感染個体が身を引いて出て行く」あるいは「未感染個体が逃げる」というという2つの選択肢が考えられますが、これまでの研究で、その力は確かに強く働いていることも、検出されました。 これまでは、寄生者が宿主に感染するのは完全にランダムなイベント、すなわち遺伝的な要因ではなく偶発的な要因によって起こるものであると仮定していましたが、今後はそれらの可能性を遺伝的なもの、あるいは非常に不確実性の高い確率的なものであるとした場合の解析を進める予定です。あるいは、宿主が寄生者によって行動を操作されている場合に、どういった遺伝学・生態学的な集団構造が形成され、宿主・寄生者が多様化していくのかを、調べる必要があります。この研究は、宿主・寄生者の空間的な進化生態学が、包括適応度という宿主の利害を介して理解するための萌芽的な位置づけと考えられます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文が出版され、自身の研究の発展の契機を自ら形成できた。しかし、それとは別に投稿した論文が査読に回っているがジャーナル側の対応が遅く、次の研究への橋渡しに時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
数理モデルを用いた検証に加え、野外・室内研究によるその実証を予定している。また、より高精度・高速化された計算機環境を構築し、効率よく計算機シミュレーションをおこなうことを予定している。
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