2014 Fiscal Year Annual Research Report
宿主・寄生者の共進化の数理的研究:移動分散と宿主操作から,多様化へ
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13J00914
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
入谷 亮介 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 宿主・寄生者系 / 宿主の移動分散の進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画[1]における、宿主の移動分散の進化についての研究を前年度に引き続いて行なったその結果、宿主の移動分散のコストは寄生者の感染タイミングによって改変されることを明らかにした。たとえば、宿主が移動中に寄生者に感染するのであれば、宿主にとっては移動分散の大きなコストになることが予想される。こうした直感的な予想を数理的に解析し、移動分散のコストを定量的に予測するための視標を提唱し、感染個体の移動分散・健康個体の移動分散のバイアスを予測することに成功した。これは、宿主の移動分散のバイアスを予測するための、初めての理論研究であり、すでに国際誌Ecological Complexityに掲載済みである。 つづいて申請者は、寄生者の水平伝播が起こる場合と、鉛直伝播が起こる場合の、宿主の適応的な移動分散の大きさを、数理モデルによって解析した。その結果、水平伝播は表現型可塑性の双安定性を生み出すことを明らかにした。これは、初期値に依存して移動分散のバイアスが決定されることを示す結果である。これは現在投稿中である。 さらに、寄生者の垂直伝播が及ぼす効果も解析するための手法を開発した。垂直伝播とは、寄生者が親から子へ伝わることである。しかし、垂直伝播は、祖父母からも(親を通じて)寄生者を継承する。つまり、感染が初めておこってから現在に至るまでの寄生者の伝播の歴史が適応度に及ぼす効果を、解析する必要がある。そのための数理的な手法を開発し、現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者の研究目的[1]にあるような、宿主の移動分散の進化研究については、すでに国際誌に掲載済みのもの(移動分散のコストが、感染タイミングによって改変される)に加え、水平伝播や鉛直伝播という、数理解析の困難な現象にアプローチする予定である。最終年度には、寄生者の進化ダイナミクスをそれに基づいて考察する予定であり、研究目的と照らしあわせても、順調な進捗にあると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
寄生者の垂直伝播と水平伝播が宿主の進化に及ぼす影響を解析した論文の、早期掲載を目指す。そして、逆に寄生者が進化する場合の進化モデルを構築し、解析する。最後に、宿主と寄生者の共進化モデルを構築し、解析する。それらの結果を統合的に比較する。
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