Research Abstract |
本研究では, ロボットの動作と人間に与える印象の関係をモデル化し, これを表現する2足ヒューマノイドロボットに全身での高い表現力および多感覚機能を実装することで, 外界からの刺激に応じ, ロボットに意図した印象を人間に与える動作を生成させることを目的としている. 第一年度目である平成25年度には, 以下の2点について研究を推進した. 1. "漫符"を用い, 読み取りやすい感情表出が可能なロボット頭部の開発 漫画家の協力を得て作成したCGによる予備実験を通じ, ロボットの表情表現において漫画に特有の記号表現である漫符の有効性を確認した. "怒り"の"血管が浮き出たマーク", "悲しみ"の"涙マーク", "嫌悪"の"しわのマーク", "恐れ"の"誇張された顔色表現"および"垂れ線"をカラーの漫符の表示するフルカラーフレキシブルLEDディスプレイ, 黒線を表示するシートを出し入れする機構の開発により実現した. これらに加え, 味覚を除く視覚, 聴覚, 触覚, 嗅覚の人間の五感に相当するセンサを搭載したロボット頭部を開発した. 評価実験の結果, 漫符を含んだ表情は基本6感情平均で90%を超える高い感情認識率を持っことが分かった. 2. ロボットの全身表現による人間の笑い誘発 ロボットの働きかけに対する人間の反応が不随意動作である「笑い」として生理学的に容易に計測可能であること, 「誘い笑い」は典型的な心理的相互作用といえることといった, 「笑い」のインタラクション研究の好例といえる特徴に注目し, 本研究の成果をロボットによる人間の笑いの誘発により評価することとした. 本年度は, 第一歩としてお笑い芸人のアドバイスのもとでロボットの全身動作によるネタを実現し, これらのネタにより人間の笑い誘発を実現, 気分プロフィール試験(POMS)の結果から被験者の"怒り", "抑うつ"の状態を有意に減少させたことを通じ, 心理状態への働き掛けが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時, 平成25年度は漫画調の表現が可能なロボット頭部の開発, およびこの頭部への人間の五感に相当する感覚機能の実装を予定していた. 実際に漫画に特有の漫符による表現を用いることで極めて高い表現能力を持ち, 五感に相当するセンサを搭載したロボット頭部の開発を達成した. さらに, 研究全体の成果を評価するための評価実験のテーマにロボットの全身動作による人間の笑い誘発を選定, ロボットの動作により作成したネタによる人間の笑い誘発と人間の心理状態への働き掛けを確認することで, この方針の有効性を確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
一点目に, ロボットのハードウェアの改良による表現力の向上がある. 本年度のロボットの頭部の表現力の向上に続き, 第二年度以降はロボットの全身での表現力をさらに向上させるため, 現状のハードウェアで表現力を特に制限している腕や手首, 手を含む上半身の関節可動角の拡大, 可動速度の向上に取り組む. 二点目に, ロボットの動作のモデル化がある. ロボットが意図した印象を人間に与える動作生成への取り組みとして, 本年度に引き続きロボットによる人間の笑い誘発に取り組む. 本年度はテストのためにロボットの動作を事前にすべて定義していたが, 「誇張した表現」や「誘い笑い」といった笑い誘発のための方策を利用し, ロボットによる自律的な動作生成を実現させる.
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