2013 Fiscal Year Annual Research Report
オレキシン神経の直接の下流で睡眠・覚醒を制御する神経回路の同定・解析
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13J00940
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
長谷川 恵美 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 睡眠・覚醒 / オレキシン / ウイルス実験 / 免疫組織学的染色 |
Research Abstract |
本研究では、オレキシン神経の直接の下流で、睡眠・覚醒調節に重要な役割を果たすニューロンを同定する試みを行ってきた。前年度までに、特定の神経核・ニューロンタイプのみでオレキシン受容体発現を回復させ、ナルコレプシー様症状が改善するかどうかを検討した。その結果、背側縫線核・セロトニン作動性ニューロン、青斑核・ノルアドレナリン作動性ニューロンがオレキシン神経により直接制御され、前者は情動性脱力発作の抑制、後者は覚醒の維持に重要な役罰を果たすことを示した。そこで、今年度は、同定した下流ニューロンを、DREADDを用いた薬理遺伝学的な手法を用いて人為的に活性化することでナルコレプシー様症状を抑制するのに十分であるかを検討した。まず、セロトニン作動性ニューロン、ノルアドレナリン作動性ニューロン選択的にhM3Dq(興奮性DREADD)を発現する組換えAAVベクターを作成した。作成した組換えAAVベクターを背側縫線核、青斑核に局所感染させ、CNOの腹腔内投与によって背側縫線核セロトニン作動性ニューロン、青斑核ノルアドレナリン作動性ニューロンを人為的に直接興奮させることで、ナルコレプシー様症状を抑制できるか検討した。また、ヒトのナルコレプシー患者の場合、オレキシン神経の特異的な脱落が原因であるため、オレキシン神経が生後特異的に変性するOroxin/ataxin-3マウスを用いた。その結果、背側縫線核・セロトニン作動性ニューロンの活性化では情動性脱力発作が、青斑核・ノルアドレナリン作動性ニューロンでは覚醒の断片化が顕著に抑制されることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究により、オレキシン神経の直接の下流で覚醒を安定化させる神経経路を、初めて明らかにし、この成果は2014年2月に米国科学雑誌「The Journal of Clinical Investigation」に論文として掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、同定した下流ニューロンが複数の脳領域に投射しているため、どの脳領域への投射がナルコレプシー様症状を抑制するのに重要かを明らかにすることに取り組んでいる。実験手技としてDREADDシステムと光遺伝学的手法を取り入れ、条件検討を行い、下流ニューロンの投射先の脳領域を一つずつ検証している。DREADDシステムにおいては、新たに組換えAAVベクターを作成し睡眠解析を行っている。それと同時に、非拘束下のマウスで脳波・筋電図を測定しながら光遺伝学的手法を行うための装置のセットアップ・条件検討も行っている。そのために、SERT-Cre(セロトニン作動性ニューロン特異的にCreを発現)とOrexin/ataxin-3マウスを交配し、Cre依存的にChR2 (Channelrhodopsin2/EYFP)を発現する組換えAAVベクターを背側縫線核に投与した。このマウスの背側縫線核に光刺激を与えて当該ニューロンを活性化すれば情動性脱力発作が抑制されるはずなので、抑制が効率良く観察できる実験条件を検討している。検討後、同様のマウスで背側縫線核セロトニン作動性ニューロンの投射先を一つずつ光刺激し、どの投射を活性化すると情動性脱力発作が抑制されるか調べ、セロトニン作動性ニューロンの作用部位を探索していく予定である。
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Research Products
(7 results)