2013 Fiscal Year Annual Research Report
量子数射影法を用いた原子核におけるエキゾチックな変形・回転状態の研究
Project/Area Number |
13J00949
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田上 真伍 九州大学, 大学院理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 量子数射影法 / 四面体変形 / 平均場理論 |
Research Abstract |
これまで原子核構造であまり調べられてこなかった新しいエキゾチックな変形の存在が平均場理論による計算で示唆されている。その中でも正四面体型の四面体変形は、比較的多くの原子核の特に安定な励起状態か場合によっては基底状態となると予想されている非常に興味深い変形である。 平成25年度においては以下のことを実行した。 まず、現実的な有効相互作用であるGogny相互作用を用いた量子数射影計算のプログラムを作成した。その結果、内部状態の計算と量子数射影計算で同じ相互作用を用いた首尾一貫した計算が可能となった。Gogny相互作用を用いた場合にも四面体変形した状態が平均場計算で現れ、そのような状態に作成したプログラムで量子数射影を行うと非常に大きな相関エネルギーを得ることが新たにわかった。他のエキゾチック変形であるバナナ型の変形状態のスペクトルの計算と変形したハロー核のEO遷移の計算も行っており、現在それらの結果を解析している。 これらに加えて、四面体変形した基底状態の偶偶核に一つ粒子がついた奇核の研究でも大きな進展があった。基底状態の偶偶核のスペクトルは変形度が大きな場合、一本の回転体的なスペクトルになるが、奇核においては変形度が大きくても複数にスプリットしたスペクトルが量子数射影による計算で得られていた。そのスプリットの様子は最後の一粒子が3種類ある軌道のどれに入るかで異なり、そのうち2種類の軌道ではスプリットの原因が粒子回転体模型におけるコリオリ相関であると解析的に示していた。しかし、残り1種類は解析的に計算する方法がわからなかったため、数値的に四面体変形した粒子回転体模型の計算を四面体変形が持つ対称性を考慮した上で行い、量子数射影と同様の結果を得た。これにより、奇核のスペクトルで見られたスプリットの原因がコリオリ相関であると結論づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標のほとんどの部分を実行し、かつ計画の段階では見通しが立たず予定していなかった、四面体変形した粒子回転体模型の計算も行うことが出来たため。また、量子数射影の計算プログラムにおいて、内部状態の対称性を用いた高速化を可能とした結果、研究が予定よりも進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画では今後変形したハロー核の計算をGogny相互作用で行う予定であったが、実際にGogny相互作用の計算プログラムを作成した上で、必要となるハローを正しく記述する模型空間とそれに対する計算時間を見積もった所、計算の実行に非現実的な時間がかかることがわかった。これに対する対応策としては複数の振動子長を持った調和振動子基底を使うなどが考えられる。他の対応策としては、スペクトルは量子数射影で計算し、ハローが最も影響する遷移確率に関しては平均場計算と回転体模型から求める方法も考えられる。平均場計算にはハローの記述に有利なガウス関数基底を用いることができ、その計算プログラムは共同研究者によって既に作成されている。
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Research Products
(7 results)