2013 Fiscal Year Annual Research Report
幼児の園生活における場のあいまい性の意味に関する研究
Project/Area Number |
13J00970
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
境 愛一郎 広島大学, 大学院教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | あいまいな場所 / テラス / 保育環境 / 情報ピックアップ理論 |
Research Abstract |
本年度は、幼児が幼稚園および保育所のあいまいな場所に見いだす意味を探るために、次の3つの施設のテラスにおいて観察を実施した。観察の際には、幼児がテラスで過ごしている場面を、メモとビデオカメラにより記録し、後にエピソードとして詳細に書き起こした。 ・A保育所(私立)テラスが2階に位置するなど独特の環境を有する。合計観察日数23日 ・B保育所(公立)都心部にあり、空間的制約が大きい。合計観察日数13日 ・C幼稚園(公立)クラス活動が中心の保育を実施している。合計観察日数14日 これらのエピソードをもとに、各園のテラスの用途および機能について検討した。うち、A園については、テラスが幼児によって、多目的空間や生活の接続のための場所として用いられる他、ルールや物理的な制約などから逃れられる場所として機能しているという結果が得られた。この結果は、テラスのようなあいまいな場所が、幼児の園生活におけるアジールとして機能していることを意味しており、保育室などの保育環境が幼児にとって制約的な環境であるという見方を示すとともに、そのなかでの幼児の自己実現の方略としてあいまいな場所を位置づけたといえる。他2園については、現在分析中である。 加えて、生態学的心理学の理論の一つである情報ピックアップ理論(Gibson1966)の視点を取り入れた、幼児と環境の相互作用の分析にも試行的に着手した。これまでの分析により、幼児の行為に影響を与えるテラスの環境要素の抽出と類型化、および、幼児の行為が変化していくプロセスの一例を捉えることができた。こうした成果は、今後の分析の指標になるとともに、幼児と環境の関係性を記述する上での一つの方法の提示であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析や結果の論文化は当初の予定より遅れてはいるものの、データは順調に収集できている。また、データがもつ豊かさも、対象園ごとの分析によりわかってきている。計4つの対象園から収集したデータの総合的な分析方法についても、具体化されつつあり、26年度の早々には、投稿論文の執筆に移ることができる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き観察を継続しつつ、データの分析作業および論文執筆作業に移行する。まず、残るB園とC園の観察データを分析し、各園のテラスの用途と機能を明らかにする。同時に、各園のテラス、および、保育の特徴を見いだす。次に、過去に扱ったD園も加えた4園の観察データを総合的に分析し、保育環境におけるあいまいな場所の中核的な性質や、その多様性の類型について明らかにする。方法としては、質的研究の方法論であるM-GTAに依拠し、各園のデータから生成した概念をもとに、あいまいな場所の機能と用途に関する構造モデルを描き出していく。以上、二つの分析の成果は、継続的に学会にて発表するとともに、5月および10月を目処に、論文として投稿する予定である。
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