2014 Fiscal Year Annual Research Report
海産クマムシ類の進化に関する総合的研究-特に筋肉系と神経系について
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13J00987
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤本 心太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 系統分類学 / 分子系統学的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
クマムシ類(緩歩動物門)は脱皮動物(Ecdysozoa)に属し、節足動物門、カギムシ類(有爪動物門)と近縁とされる体長1ミリ以下の微小な動物である。近年この動物は、陸産種のもつ極限環境耐性で注目を浴びている。この中で海産クマムシ類は、クマムシ類が海に起源をもつとされていることや、祖先的な形質を最も多く残していると考えられる分類群を含むことなどから、クマムシ類の進化(例えば陸上進出や乾燥耐性の獲得)を考える上で非常に重要である。それにもかかわらず、基礎となる海産クマムシ類の系統関係に関する研究は進んでいない。本研究では海産クマムシ類の分子データと形態データ(新規のデータとして筋系と神経系の導入を試みる)に基づいて系統関係を研究するものである。 平成26年度は分子系統学的研究と形態学的研究(筋系と神経系の観察)に用いる分類群の採集のため、八重山諸島調査(石垣島と波照間島)、房総半島沿岸調査、紀伊半島沖調査、米国フロリダ沿岸調査、鳥取県沿岸調査、三浦半島沿岸調査を行った。採取した種について同定し(複数の未記載種を確認)、分子生物学的実験によって分子データを取得した。平成25年度に得た分子データと平成26年度に得た分子データをあわせて分子系統学的解析を行った。その結果、これまで考えられていたものとは大きく異なる、フシクマムシ目の科間の系統関係に関する重要な知見がいくつも明らかになった。この結果の信頼性をより高いものにすることで、海産クマムシ類にとどまらず、クマムシ類全体の進化学的研究に大きな影響を及ぼすものになると考えられる。この新しい系統関係から形態データの系統的シグナル検出は準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子系統学的研究で、これまでの考えられていた系統関係と大きく異なる系統関係が明らかになりつつある。これは研究遂行する上で非常に有意義である。しかし、分類群を増やしてこの系統関係が信頼に足るものであるとわかるまでは、それに基づく筋系と神経系の進化に関する研究・考察は先延ばししなければならない。
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Strategy for Future Research Activity |
分子系統解析で明らかになりつつある海産クマムシ類の系統関係は、これまで考えられていた系統関係と大きく異なる。系統関係を信頼性の高いものにしない限り、それに基づいた筋系と神経系の議論は信頼性を欠くものになってしまうので、今後はこの系統関係を明らかにすることにまず重点をおいて研究を進める。
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