2013 Fiscal Year Annual Research Report
化合物レベルの同位体分析を用いた河川食物網の高精度解析
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13J01021
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
石川 尚人 独立行政法人海洋研究開発機構, 生物地球化学研究分野, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-26 – 2016-03-31
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Keywords | 炭素循環 / 窒素循環 / 河川生態系 / 放射性炭素14 / アミノ酸同位体比 / クロロフィル同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
食物網は生態系の中で物質やエネルギーの流れを規定しており、その研究は生態学の中で最も重要なテーマの1つである。陸域と水域とをつなぐ河川生態系において、生物の餌起源の指標となる炭素安定同位体比は、小さなスケールで大きな変動を示す。一方、栄養段階の指標となる窒素安定同位体比は、生物分類群間で分別係数が異なることが知られている。このような従来手法の問題点を克服し、河川食物網を高精度に解析するためには、新たな指標の開発・応用が必要不可欠である。 本研究では、放射性炭素14(14C)天然存在比を用いた食物網の炭素起源推定を行い、流域に分布するさまざまな炭素リザーバー(例:母岩や土壌に含まれている炭素)が、付着藻類の生産を通して、河川食物網を支えていることを明らかにした。また、アミノ酸やクロロフィルの各種同位体比を測定することで、河川生態系のような複数の食物連鎖が食物網を構成する複雑系の解析が、高い精度で行えることを示した。 以上の成果は、最新鋭の同位体分析技術を駆使することで、これまで全貌の解明が難しかった河川生態系の食物網研究に新たな展開を見いだした点において、極めて重要である。河川生態系の生物間相互作用や食物網構造を理解するための、さらには環境変動への生態系の応答を予測するための強力なツールとして、炭素の起源や滞留時間を明らかにできる14C、そして生物の栄養段階を明らかにできるアミノ酸窒素安定同位体比は、今後ますます利用されていくものと考えられる。したがって、今年度の成果である3報の論文はそのパイロットスタディとして、これから多く引用されていくことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
河川試料のクロロフィル同位体分析手法を確立し、データを量産できる体制を整えた。また査読付き国際誌への論文発表が2報、査読付き国内誌総説1報、学会発表3件の成果をあげた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に確立した分析体制を用い、データを量産して論文を執筆する。また、本研究で提案する手法をこれまでのフィールドだけでなく、陸域や海域、さらには国外のフィールドなどさまざまな生態系へ適用することで、手法の汎用性について検証していく予定である。
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Research Products
(7 results)