2014 Fiscal Year Annual Research Report
ぜん動運動を模擬した胃モデル装置による食品消化動態のin vitro評価系の構築
Project/Area Number |
13J01035
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
神津 博幸 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヒト / 胃消化 / ぜん動運動 / 固形食品 / In vitroモデル / 物理的消化 / O/Wエマルション / ゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)背景と目的: 胃での食品の消化動態を定量評価することは、消化能が低い高齢者や消化器疾患患者を対象とした消化・吸収性の高い食品開発の基礎的知見として有用である。本課題研究では、胃消化の中で特に知見の少ない胃ぜん動運動による物理的な固形食品の消化に着目し、ヒトの胃ぜん動運動を模擬した新規in vitroモデル装置、胃消化シミュレーターを用いて、ヒトの胃における食品消化の評価系を構築することを目的とした。目的を下記の小目的に分割し、平成26年度は主に小目的②のうち、物理的な消化作用の解析に取り組んだ。 ①胃での食品が消化される様子を直接観察し、食品消化の基礎的な知見を得る ②消化における物理的な作用と化学的な作用の両方を同時に評価し、それぞれの役割を整理する ③胃における消化特性を考慮した食品物性の探索を行う (2)研究成果: 大豆油を栄養成分のモデルとし、大豆油エマルションの連続相を寒天でゲル化させることで、栄養成分を固形の基材に包括させたモデル固形食品(O/W-gelエマルション)を調製した。咀嚼を想定し、初期サイズ5 mmのO/W-gelエマルションと人口胃液(消化酵素+塩酸)を胃消化シミュレーターに入れ、ぜん動運動を発生させた。その結果、ぜん動運動によりO/W-gelエマルションのゲル粒子が物理的に微細化され、微細化に伴う粒子表面積の増加に比例して油滴がゲル粒子から放出されることがわかった。このことから、胃ぜん動運動による物理的なゲル粒子の微細化が、栄養成分の胃液中への放出を促進していることが示唆された。また、小目的③にも一部取り組んだ。具体的には、ゲル化剤として寒天とネイティブ型ジェランガムを混合して使用し、破断応力を低下させたゲルで同様の試験を行った。その結果、ゲル粒子の微細化と油の放出量が抑制され、消化特性を考慮した食品物性に関する最初の知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要欄記載中の平成26年度の課題「小目的②消化における物理的な作用と化学的な作用の両方を同時に評価し、それぞれの役割を整理する」のうち、前半の物理的な作用を中心に取り組むことができたため。また、次年度以降の課題である「小目的③胃における消化特性を考慮した食品物性の探索を行う」についても取り組むことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要欄記載の「小目的③胃における消化特性を考慮した食品物性の探索を行う」を中心に研究を行う。具体的には、複数種類のゲル化剤を用い、ゲル化剤の濃度・混合比を変化させることで、物性の異なるゲル状食品試料を調製し、胃消化シミュレーターでの消化挙動を解析する。また、「小目的②消化における物理的な作用と化学的な作用の両方を同時に評価し、それぞれの役割を整理する」について、化学的な作用の解析も行う予定である。具体的には、消化酵素の作用を受けやすい豆腐を食品試料とし、消化酵素の濃度を変更した系で消化試験を行うことで、酵素反応の固形食品消化に対する影響を解析することを検討している。
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