2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J01048
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
原田 走一郎 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 八重山語 / 琉球諸語 / 記述文法 |
Research Abstract |
本研究の目的は南琉球八重山黒島方言の記述文法の執筆である。その目的に対し、本年度は着実に成果をあげることができた。文法全体に関しては、総合的記述文法書の前段階であるスケッチグラマーを執筆し、黒島方言全体の概観をすることができた。また、個別のトピックに関しても成果を発表した。以下、それぞれの概要を示す。 (1)形容詞のサブグルーピングに関して : これまでひとつのクラスとして扱われてきた黒島方言の形容詞には、形態的に異なるふるまいを見せる2つのグループがあることを示した。さらに、他の琉球諸語にも類似する現象が存在することもあわせて指摘した。今後、諸方言のさらなる調査が期待される。 (2)脱動詞形容詞化接辞idaについて : この接辞の存在をはじめて指摘し、その形態的、統語的、意味的特徴を記述した。この接辞は動詞を形容詞化する接辞であり、その動詞を「頻繁に行う」「大量に行う」といった意味を加えるものである。さらに、その動詞を「上手に行う」という意味にもなりうるため、抽象的な意味が文脈によって語用論的に解釈されるものと結論付けた。 (3)子音/h/を挟んだ母音同化について : 単独でisanaki「石垣島」という語に、日本語の「は」に相当する主題をあらわす助詞aを付した場合、isanake=eというように名詞の末尾母音と助詞の母音が同化を起こす。しかし、実はそれだけではなく、「~へ」という意味を持つ助詞haなどを付した場合にも、isanake=heというように母音の同化が生じることがある。このように子音を超えて起こる母音の同化は通言語的に見ても珍しいものである。この母音同化のメカニズムと、生起環境の制限を記述した。 +B69
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
手持ちの自然談話に日本語訳をつける作業が終わったことは評価できる。また、スケッチグラマーの執筆をとおして文法全体の概観はできており、文法書執筆のための準備は予定通り着実に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、夏と冬の集中的なフィールドワークにおいてデータを収集、整埋する。
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Research Products
(3 results)