2014 Fiscal Year Annual Research Report
Piwiタンパク質によるプラナリア全能性体性幹細胞の維持機構の解明
Project/Area Number |
13J01064
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鹿島 誠 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 幹細胞 / プラナリア / Piwi / 転移因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物では全能性幹細胞は発生のごく初期にしか存在しない。一方、プラナリアなどの一部の無脊椎動物では成体においても全能性幹細胞が維持されているが、それら全能性幹細胞を成体内で維持・制御している分子機構については不明な点が多い。プラナリアの全能性幹細胞(新生細胞)で優位に発現するpiwi遺伝子は、他の無脊椎動物でも全/多能性幹細胞で発現しており、それら幹細胞でのpiwiの機能が示唆されている。本研究は新生細胞の制御においてPiwiBタンパク質が担う役割を明らかにすることを目指している。本年度はPiwiBタンパク質が新生細胞で産生され、分化過程で分化細胞へと分解されずに継承されていくことを見出した。前年度までに明らかにしたPiwiBが新生細胞の分化過程でトランスポゾン(gypsy-P1)を抑制していることと合せ、分化細胞へと継承されたPiwiBはgypsy-P1を抑制することによって、正常な分化細胞の供給に寄与していると考えられた。また、PiwiB標的遺伝子の網羅的同定のため、RNA干渉(RNAi)法によって機能阻害を行い再生能力が失われる以前のpiwiB(RNAi)個体のmRNA-seqを行った。その結果3167個の発現変動遺伝子を検出した。発現上昇した遺伝子にpiRNAと相補的な遺伝子が多く含まれたことから、ハエやマウスと同様にプラナリアでもPiwiはpiRNAを介して、遺伝子発現を負に制御していることと考えられた。また、piRNAが一致しpiwiB(RNAi)個体で発現が上昇していた581個の遺伝子の内33 %はトランスポゾンであったが、46%はトランスポゾン以外と相同性を示した。そして、新生細胞で発現が上昇するトランスポゾン以外の遺伝子を同定した。この結果から、PiwiBは新生細胞の分化過程だけでなく、新生細胞自体でも遺伝子の発現制御に関与しうることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、現在までに得られているプラナリアの幹細胞システムにおけるPiwiタンパク質の研究成果をまとめることに主眼を置いていた。前年度からの進展として、新生細胞で産生されたPiwiBが分化細胞へと継承されることを明らかにし、トランスポゾン制御におけるその重要性に注目して論文投稿の準備を進めている。一方で次の段階として、PiwiBの新生細胞・分化細胞における役割を明らかにするためにpiwiBノックダウン個体のトランスクリプトーム解析を行い、PiwiB標的遺伝子の同定も試みていた。トランスクリプトーム解析で得た数十の候補遺伝子に対してqPCRや組織染色を用いたスクリーニングを行い、PiwiBタンパク質によって新生細胞自体で発現が抑制される遺伝子を同定した。次年度では、スクリーニングの継続によってより多くのPiwiB標的遺伝子の同定が期待されるとともに、それら遺伝子の新生細胞制御における機能解明を通して、プラナリアの全能性幹細胞におけるPiwiタンパク質の機能解明に迫ると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
PiwiBの新生細胞自体での機能の解明を目指す。mRNA-seqによって同定したPiwiB RNAi個体での発現変動遺伝子の個体内での発現を確認していないものに関して、in situ bybridization法によってpiwiB RNAi個体における新生細胞での発現を確認する。新生細胞でPiwiBによって発現が制御されている遺伝子に関してはRNAi法によってその機能解明を目指す。
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Research Products
(7 results)