2013 Fiscal Year Annual Research Report
海産甲殻類ワレカラ属の雌雄における第2咬脚を中心とした武器の適応進化を探る
Project/Area Number |
13J01080
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
竹下 文雄 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 海産甲殻類 / 武器 / 行動 / 適応 / 保護行動 |
Research Abstract |
海産甲殻類ワレカラ属はしばしば第2咬脚を武器として使用する。第2咬脚にはその前節縁部にPoison tooth(以下PT)と呼ばれる突起があり、その先端には複数の孔が存在する。またいくつかの種では第2咬脚の指節先端にも孔が存在する。そこで本研究では本属の雌雄における第2咬脚の武器としての機能にっいて検討するため以下2つの研究を実施した。 1)雌雄の第2咬脚における分泌腺構造の確認 トゲワレカラの雌雄の第2咬脚についてパラフィン及び樹脂切片を作成し, PTおよび指節の先端周辺における分泌腺を観察した。この分泌腺の構造は単非分枝房状腺であり, PT・指節先端のどちらも同じ構造を持っていた。雄ではPTの周辺と指節先端の周辺のどちらにも分泌腺が確認され、各分泌腺の個数はPT周辺で30個程度、指節先端で5-10個程度確認された。雌では指節先端に5-8個程度の分泌腺が確認されたが、PT周辺部には分泌腺は確認されなかった。 2)子の保護を行う雌における武器の適応的意義の検討 幼体の保護を行う雌の第2咬脚を片方切除し、幼体の捕食者である同種個体と共に飼育を行い、幼体を保護する期間と生存個体数の比較を行った。幼体を身体に捕まらせて保護する期間には、実験区とコントロール区で有意差は検出されず、また全ての幼体が母親から基質におりるまでの期間においてもコントロール区と実験区間で有意差は検出されなかった。現段階では幼体の生存個体数を測定し終えていないため、今後はその測定を行うとともに、データを追加し実験の信頼性を高める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度ということもあり、採集場所の決定や実験装置の作成、予想よりも長期にわたる初夏から秋にかけての個体群の減耗等の理由により、平成25年度前半の研究が遅れた。また内部構造の特定により、分泌腺は確認できたが特定の貯蔵器官を持たない可能性が高まったため、バイオアッセイによる毒性実験の手法について再考する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として、まず本研究の根幹である本属の武器としての機能を特定することに重点を置き、組織科学的な手法及び、バイオアッセイ実験を行うことで毒性の評価を行う。また同時並行して闘争実験および資源配分実験を実施する。
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