Research Abstract |
申請者は, 感情労働によって喚起される即時的な心臓血管系反応の賦活が, 労働という日常的な枠組みの中で慢性化することにより抑うつやバーンアウトなどの有害な症候に繋がると考えており, 本研究では, 感情労働によって喚起される生理反応パターンおよびその持続性を, ロールプレイ実験などを通して明らかにすることを目的としている。 平成25年度の研究実績の概要としては, 2013年4月~6月に, ロールプレイ技法を用いて感情労働が生理反応に及ぼす影響を検討するための実験を実施した。実験手続きとしては, ファーストフード店内における店員と顧客の会話を想定したシナリオを用意し, 実験参加者に店員役を演じさせる間の生理反応の測定を行った。顧客役は実験協力者が演じた。生理指標としては, 収縮期血圧・拡張期血圧および心拍率を測定した。主観指標としては, 一般感情尺度および独自で作成した感情的不協和質問紙を用い, 同時に, ロールプレイ中の表情を録画した。また, 本実験では, 顧客役からクレームを受ける群において感情的不協和が生じると仮定し, 実験参加者をクレームあり群とクレームなし群に無作為に振り分けた。その結果, クレームあり群において感情的不協和が適切に喚起され, 拡張期血圧がクレームなし群に比べて有意に高かった。したがって, 感情的不協和によって, 心臓血管系反応のパターンII型が喚起される可能性が示唆された。パターンII反応は不適応な生理反応の指標と考えられるため, この知見は, 感情労働におけるストレスを生理学的に検討する上で非常に重要性が高いと考えられる。なお, この研究結果は2013年9月の国内学会において発表した。 また, 2013年8月にはアメリカのバークレーで開催された国際学会において, 前年度の研究に関するポスター発表も行った。さらに, 2014年2月には, 国内学会誌において論文が一本受理され, 現在インターネット上で早期公開中である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは, 対面での感情労働が生理反応に及ぼす影響を検討してきたが, 今後は対面しない形での感情労動が生理反応に及ぼす影響についても検討を行いたいと考えており, コールセンターシミュレーションを用いた実験を新たに実施する。また, 従業員の持つどのような性格特性が感情労働とストレスの間を媒介するかを明らかにするための調査研究も同時に行う。
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