2013 Fiscal Year Annual Research Report
ニューロン新生傷害に関わるエピジェネシスを基盤とした神経発達障害評価
Project/Area Number |
13J01103
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
白木 彩子 岐阜大学, 連合獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 発達神経毒性 / 海馬歯状回 / 抗甲状腺剤 / 介在ニューロン / ラット |
Research Abstract |
本研究では、発達期暴露より簡便な成熟期暴露による一般毒性試験の枠組みでの発達神経毒性の評価を可能にすることを目的とする。本年度は発達神経毒性の陽性対照物質として、抗甲状腺剤であるプロピルチオウラシル(PTU)を用い、以下の1)、2)の実験を行った。なお、海馬歯状回に加え、大脳皮質、脳梁、小脳も解析部位に加えた。 1) PTUのラット発達期暴露実験 マイクロアレイ遺伝子発現解析により、各解析部位で、ニューロンの発生・分化に関わる遺伝子群に変動がみとめられた。また、グリア発達関連の遺伝子群の変動が、大脳皮質および脳梁において特徴的に認められた。変動遺伝子の中から、免疫染色により評価可能な遺伝子として、海馬歯状回におけるCOX2、大脳皮質および脳梁におけるMbpなどが見いだされた。さらに、免疫組織化学により、海馬歯状回顆粒細胞層下帯における分化初期段階でのニューロン新生障害が見いだされた。また、海馬歯状回門、大脳皮質および小脳皮質において、GABA性介在ニューロンのポピュレーション変動が見いだされた。これらの変動は、成熟後も持続していた。一方、海馬歯状回のCpGアイランドマイクロアレイによって獲得できたメチル化変動遺伝子はわずかであった。 2) PTUの28日間反復投与実験 マイクロアレイ遺伝子発現解析により、脳の各部位で神経系の分化やシナプス形成関連の遺伝子群に変動がみられ、特に海馬歯状回では発達期と共通する変動遺伝子も見いだされた。歯状回ではさらに、ミエリン形成やグリア新生関連の変動遺伝子が見いだされた。さらに、免疫組織化学により、海馬歯状回顆粒細胞層下帯におけるニューロン新生障害と、reelin陽性GABA性介在ニューロンの増加が認められた。以上のことから、28日間反復投与試験の枠組みでも、発達神経毒性と同等の変化が検出可能であり、海馬歯状回が評価部位として高感度である可能件が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
PTUの発達期暴露実験により、遺伝子発現プロファイルおよび、免疫染色可能な毒性指標候補分子を獲得した。さらに28日間反復投与実験も実施し、解析がほぼ終了した。終了した2実験のデータについて、現在論文執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
被検物質として、ビスフェノールA等の、発達神経毒性が指摘されている物質を用い、28日間投与実験を行う。海馬歯状回のマイクロアレイ解析を行い、PTU暴露実験により得られたデータと比較することで、PTUで同定された遺伝子プロファイルが、他の発達神経毒の評価に応用可能か否かを検討する。PTUの暴露実験では、メチル化解析では有意義なデータが獲得できなかったが、影響の持続性は免疫染色により確認されたため、次に用いる被検物質についても、免疫染色により障害の持続性を評価し、可能であればメチル化解析も行っていく。
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Research Products
(1 results)