2014 Fiscal Year Annual Research Report
ニューロン新生傷害に関わるエピジェネシスを基盤とした神経発達障害評価
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13J01103
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
白木 彩子 岐阜大学, 連合獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 発達神経毒性 / 海馬歯状回 / 抗甲状腺剤 / 介在ニューロン / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、一般毒性試験の枠組みでの発達神経毒性の評価を目的とする。 1) PTU暴露実験の追加解析:発達期暴露の生後21日齢で、海馬歯状回顆粒細胞層下帯(SGZ)および大脳皮質で、EphA4陽性細胞数が減少した。生後77日齢では、SGZでは増加、大脳皮質では減少した。また海馬歯状回顆粒細胞層において、発達期暴露の生後21日齢で、シナプス活動の指標となる前初期遺伝子のArc陽性細胞が減少、生後77日齢で増加した。28日間反復投与ではこれらの変動は認められなかった。GABA性介在ニューロン指標のSomatostatinの分布を検討した結果、発達期暴露の生後21齢および28日間反復投与の海馬歯状回門において、陽性細胞が増加した。これらの結果から、PTUの発達期暴露による、海馬歯状回におけるニューロン新生に起因するシナプスの活動低下が示唆された。また、28日間反復投与によっても発達期と比べると影響は小さいものの、同様の障害が検出できることが示唆された。 2) 他の神経毒性物質との遺伝子発現プロファイルの比較:毒性機序に特異的あるいは共通する毒性指標候補獲得のため、軸索傷害物質であるグリシドール、髄鞘傷害物質であるクプリゾンの暴露実験で得られたマイクロアレイデータを用い、物質間の比較を行った。その結果、PTU・クプリゾン間でミエリン形成傷害指標候補の遺伝子セットを獲得した。また、成熟動物を用いた神経毒性評価としては、広範な毒性機序を有する物質では海馬歯状回、髄鞘傷害物質では、ミエリンの豊富な脳梁および帯状回が評価部位として高感度である可能性が示された。 3) MNUのマウス発達期暴露実験:エピジェネティックなニューロン新生傷害性評価のため、遺伝子配列情報が詳細なマウスを用い、MNUの発達期暴露実験を行った。生後21日齢の海馬歯状回のDNAを用い、次世代シークエンスによりメチル化解析を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PTUの暴露実験により、免疫染色可能な毒性指標候補分子を獲得した。さらに異なる毒性機序を有する物質間でのプロファイルの比較を行い、ミエリン形成障害の指標候補遺伝子セットを獲得した。終了したPTUの2実験の網羅的遺伝子発現解析データについて、2論文を発表し、免疫組織化学的解析結果についても現在論文執筆中である。一方、エピジェネシスを基盤とした評価法については、被験物質と動物種を変えて再検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の異なる神経毒性物質の障害性プロファイル比較によって得られた結果が、同様の毒性機序を有する他の化学物質の評価にも応用可能か否かを検証するために、他の軸索傷害物質および髄鞘傷害物質を用いた28日間反復投与実験を行い、同様のタンパク指標あるいは遺伝子セットの有用性を検証する。 また、MNUの次世代シークエンス解析結果をもとに、メチル化変動を示す遺伝子の検索を行う。さらに、免疫組織化学的検索により、海馬歯状回におけるニューロン新生障害性とその持続性を検討する。
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Research Products
(3 results)