2013 Fiscal Year Annual Research Report
性的対立による形質進化がもたらす繁殖干渉の非対称性
Project/Area Number |
13J01115
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
京極 大助 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 性的対立 / 繁殖干渉 / マメゾウムシ / アズキゾウムシ / ヨツモンマメゾウムシ / 種間交尾 / 繁殖形質 / 種間相互作用 |
Research Abstract |
アズキゾウムシのオスとの種間交尾を経験することでヨツモンマメゾウムシのメスの産卵数が低下する。種間交尾が産卵数を低下させるメカニズムを明らかにするため、一連の実験を行った。まず種間交尾時に射精物の輸送はあるものの、射精物の輸送が産卵数に与える影響は認められなかった。一方、種間交尾によりヨツモンマメゾウムシのメスの生殖器が物理的に損傷しており、この生殖器の物理的損傷が産卵数の低下の原因であると考えられた。また生殖器の物理的損傷の生じやすさは交尾相手のアズキゾウムシのオスの交尾器形態と有意な相関を示した。アズキゾウムシのオス交尾器には棘があり、この棘が長いオスほどヨツモンマメゾウムシの生殖器を損傷させやすかった。このことから、アズキゾウムシのオス交尾器の棘が、生殖器の物理的損傷を介して、ヨツモンマメゾウムシの産卵数に与える効果の大きさに影響していることが示唆された。アズキゾウムシの交尾器の棘はオス同士の受精をめぐる競争(精子競争)において有利にはたらくと考えられている。一方でこれらの棘は交尾に際して同種のメスを傷つける。このため交尾器の棘はオスにとっては好ましい一方でメスにとっては好ましくない形質であり、雌雄間の利害対立(性的対立)をもたらしている。また繁殖過程での種間相互作用は繁殖干渉と呼ばれ、その生態学的な重要性に関する知見が近年多く報告されている。本研究の結果は繁殖形質の中でも特に性的対立に関連した形質が種を超えて効果を発揮することで種間相互作用(繁殖干渉)の強さに影響しうることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一連の実験によりマメゾウムシにおける繁殖干渉のメカニズムが明らかとなった。また実験進化もおおむね予定通り進行中であり、今年度中に計画された検証を終える予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
アズキゾウムシの個体群を一夫一婦制および乱婚状態で維持し、交尾器形態を実験的に進化させる実験進化が現在進行中である(現在約11世代目)。一夫一婦制のもとでは雌雄間の利害対立が解消され、アズキゾウムシの交尾器の棘が縮小すると期待される。このため一夫一婦の個体群由来のアズキゾウムシはヨツモンマメゾウムシの産卵数に与える影響が小さいと期待される。この検証を今年度中を目途に行う予定である。
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Research Products
(3 results)