2013 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエの暗闇適応に関わる遺伝子の網羅的同定
Project/Area Number |
13J01161
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井筒 弥那子 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ショジョウバエ / 実験進化 / ゲノム / 集団遺伝 / 環境適応 / 次世代シーケンサー |
Research Abstract |
暗闇適応に関わる遺伝子の同定を目指して、暗黒バエと野生型ハエを1対1で混合した集団を継代した。次世代シーケンサーを用いて集団のゲノムシーケンスを行い、混合集団における一塩基多型(SNP)の同定とその集団内頻度の計算を行った。まず始めに、ゲノム全体のSNP頻度を集団間で比較し、集団間の関係性を調べた。0世代目と22,49世代目の明暗条件(以下LD)各3集団、恒暗条件(以下DD)各3集団の計13集団のSNP頻度のデータを多次元尺度構成法を用いて解析したところ、LDの集団とDDの集団で異なるクラスターができ、さらに22世代目と49世代目でも異なるクラスターに分けることができた。このことから、本実験において光条件による選択が効果的に働いたことが示された。49世代目のLD集団とDD集団でSNP頻度に有意差が見られ、かつDD集団の方で頻度が高かったSNPについてその頻度の時系列変化を調べ、SNP頻度の変動の原因(遺伝的浮動や正または負の選択)を推測することができた。特にDDの集団で正の選択を受けていると推測された領域には暗闇適応に関わる変異が存在する可能性が高いと考えられる。これらの領域の中でも特に高い有意差を示す3つの領域に候補を絞り、この領域に位置する遺伝子138個をリストアップした。これらの遺伝子を暗闇適応に関与する候補として個別解析に進めることにした。また、LD集団とDD集団でSNP頻度に有意差が見られる領域が22世代目と49世代目で異なることがわかり、22世代目で有意差がある領域は、その後固定化することはなく、頻度が70%程度でプラトーに達するという現象を観察した。この現象は集団内の多型を維持する平衡選択や遺伝子間の相互作用(エピスタシス)によるものと予想される。このような混合集団の選択実験と集団ゲノムの解析は進化学に重要な知見を与えるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、集団のゲノム解析を優先して行い、現在までに138個の候補遺伝子をリストアップした。さらに、ストックセンターから候補遺伝子のRNAi系統を取り寄せ、そのいくつかに関しては遺伝子ノックダウンによる生存率への影響を調べる実験を行い、おおむね申請書記載の研究計画通り進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、候補遺伝子のRNAi系統を用いて、遺伝子ノックダウンの生存率への影響を調べ、LDとDDで生存率に差が見られるものを探索する。これらの遺伝子は明暗に応答し生存に寄与する可能性があり、これらの遺伝子に関して、さらに解析を進めていく。具体的には、CRISPR/Cas9システムを用いて、暗黒バエ型の変異を持つ系統を作製し、どの遺伝子のどの変異が生存率に寄与するのか特定する。更には、集団内の対立遺伝子頻度のデータから遺伝子間の相互作用を予測し、多重変異体等の作製によりその相互作用を検証する。最終的には、暗闇適応に関わる遺伝子を複数同定し、各遺伝子の適応度への寄与率や、遺伝子間の相互作用を明らかにする。
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Research Products
(4 results)