2014 Fiscal Year Annual Research Report
Bi系トポロジカル絶縁体の電子状態と超伝導接合に関する研究
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13J01195
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 悠介 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / 超伝導 / 結晶成長 / 輸送特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、トポロジカル絶縁体の表面に存在する特殊な電子状態と超伝導状態とが組み合わさった系における物性を実験的に調べることである。主に母物質をトポロジカル絶縁体に持つ超伝導体であるCuxBi2Se3と、超伝導接合系を対象に研究している。 これまでCuxBi2Se3については、超伝導体積分率の高い試料を育成するために、添加した銅がBi2Se3のバルク電子状態に与える影響を系統的に調べてきた。本年度は特にフェルミ面の異方性に着目し、量子振動の振動周期の角度依存性を調べた。量子振動の角度依存性を測定したことで、キャリア密度に対応してフェルミ面の異方性が増大していく振る舞いを確認した。CuxBi2Se3のキャリア密度は、Cuのドープ量だけでなくSeの欠損量の影響を受けるため、Cuが入っていても母物質と同程度のキャリア数の試料を作ることが可能である。こうした試料での測定によって、フェルミ面の異方性の増大がCuの挿入によりBi2Se3層間が広げられた効果に寄るのではなく、純粋にキャリア数の増大にのみ依存しているということを確かめた。また最近、Srの添加によってもBi2Se3で超伝導が発現することが報告された。このSrxBi2Se3について単結晶を育成し、これまでに超伝導発現の再現を得ることに成功している。 本年度はつくば産学連携人材育成プログラムの支援を受けて、2014年8月~12月までの4ヶ月間、フランスのネール研究所へ留学した。ネール研究所では、トポロジカル絶縁体/超伝導接合の実験に取り組んだ。滞在中に良質な界面を持つ接合デバイスを作製することができた。100ミリケルビンまでの極低温でこの試料を測定した結果、シャピロステップの異常を観測した。この結果がトポロジカル絶縁体特有の性質を直接証明するものであるかどうかは明らかではないが、その兆候を示すものと考えて現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CuxBi2Se3の電子状態について、磁気抵抗の角度変化測定からフェルミ面の異方性の情報を得ることができた。また、関連物質であるSrxBi2Se3について超伝導となる単結晶を育成した。 本年度は特に、トポロジカル絶縁体と超伝導体との接合について、試料作製の手法を確立し、接合試料の輸送特性を評価することができたのは大きな進展である。Bi2Se3と超伝導体との接合においてトポロジカル絶縁体としての表面状態の兆候を掴むことは研究目的として予定していたことであり、その点にアプローチすることができたため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
CuxBi2Se3については、異方性の増大と超伝導発現との関連を探るために、同様の系であるSrxBi2Se3の電子状態についても異方性を調査したい。これらふたつの系を比較することで、Bi2Se3のドーピング機構について理解を深め、今後超伝導との関連を研究していく予定である。超伝導接合に関しては、すでに試料作製のプロセスは確立している。CuxBi2Se3やSrxBi2Se3を超伝導体として利用した接合試料を今後作製し、トポロジカル絶縁体と超伝導体との間の物理を追求していくつもりである。
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Research Products
(3 results)