2014 Fiscal Year Annual Research Report
代数体に対するボスト・コンヌ型のC*力学系について
Project/Area Number |
13J01197
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武石 拓也 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | ボスト・コンヌ / 作用素環 / 類体論 / 非可換幾何 |
Outline of Annual Research Achievements |
Bost-Connes系の分類問題に取り組んだ. Bost-Connes systemは代数体に付随して定義される$C~*$-力学系であり, 類体論と関係がある. 最初有理数体に対して定義されたBost-Connes系の任意の代数体に対する一般化は長らく未解決であったが, Neshveyevらの研究により近年解かれた. 一般化問題に終止符が打たれたことによって, 今後の興味は一般化からBost-Connes系それ自体に対する研究に移ってくるであろうと思われる. その一環として, どちらかと言えばC*-環論寄りの視点から, 私は分類問題に取り組んだ. 分類問題とは, 2つの代数体に付随するBost-Connes系がC^*-力学系として同型だったとき, もとの体は同型であるかという問題である. この問題の難しいところは, C*-環論における主要な分類定理は核型単純環に対するものであり, 非単純環であるBost-Connes系に対しては主要な分類定理を適用できないことにある. Bost-Connes分類問題はCornelissen-Marcolliによって部分的に研究された. 彼らの手法は$C^*$-環の同型から力学系を復元しようというアプローチで, Bost-Connes系の基になる力学系がどれほど類体論の情報を保存しているかについて一定の成果を上げたが, 環の同型から力学系を復元する最も難しい部分は乗り越えられず, 結果的には分類問題の意にそぐわない形で終わってしまったといえる. 私は今回, 力学系を復元するアプローチから切り替えて, 表現論的な手法で体$K$の狭義類数が同様に不変量になっていることを示した. 私が証明したのは, Bost-Connes C*-環は狭義類数次元の既約表現を持つがそれ以外の有限次元表現を持たないということである. Bost-Connes系についてこれまで知られている最も良い不変量は, Laca-Larsen-NeshveyevによるKMS状態分類定理の帰結として得られるDedekind zeta関数である. 狭義類数はゼータ関数とは独立な不変量であることが分かっており, その意味で今回の結果は, 完全分類には程遠いにせよ, 新たな分類定理であるといえる. その他, 具体的な表現の構成や, 今回の表現の分類結果とKMS分類定理の関係を明らかにして併せて論文にまとめた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度得られた結果はLaca-RaeburnのBost-Connes系に対する古い研究結果を参考にしており, 初年度に様々な論文に目を通していた成果が反映されているといえる。ある程度の結果をまとめて論文にすることができたため, 2年度目における目標は概ね達成できたと思われる.
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた結果は有限次元表現のみに着目している. 一方でKMS分類定理は忠実な既約表現に着目しているが, 忠実でない無限次元表現も, 体が有理数体でも虚二次体でもない場合には膨大に存在する可能性があることが, 副次的な結果としてわかっている. そのため, 表現論的な手法を推し進めて今回の結果を改良できる可能性がある. また, この手法では完全分類は難しいが, Cornelissen-Marcolliの手法を改良することで完全分類ができる可能性があるため, こちらの手法についても検討したいと思う.
|
Research Products
(11 results)