2013 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア系日本語話者の意味交渉の研究―複言語主義の視点から
Project/Area Number |
13J01204
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
赤羽 優子 筑波大学, 大学院人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アジア系留学生 / 非母語話者同士 / 接触場面 / 意味交渉 / 修復連鎖 / 会話分析 / 成員カテゴリー化分析 / 日本語学習 |
Research Abstract |
日本語学習者のコミュニケーションにおける問題修復の方法を体系的に提示することを目的に、平成25年度の実施計画とした下記4項目に基づき、以下のように実施した。 1. 日本語会話資料の収集 : 日本語教育機関に協力を依頼し、許可を得た上で会話資料を収集した。個人情報保護を重視した協力承諾書を調査協力者との間で交わし、調査協力者41名、合計20組の約40時間に及ぶ日本語学習者同士の日常日本語会話場面の調査を行った。 対面インタビューを行い、調査協力者背景についても情報を収集した上で、音声に加え、表情や非言語行動も観察できるよう、デジタルビデオカメラとICレコーダーを複数台用いて、日本語会話場面の多方面から動画、音声データを収集した。 2. 録画資料の文字データ化 : 調査者自身と外部委託によって、録画資料の文字データ化を行った。文字化の方法は、発話の間合いや重なり、非言語行動もデータ化できる会話分析の日本語文字化ルールを参考にデータベース化した。 3. 分析 : 文字データと動画データを観察しながら、会話内で問題が起きた部分を取り出し、日本語学習者間での問題修復の方法を観察し、そこで行われている活動及び学習を、会話分析と成員カテゴリー化分析から探った。その結果、カテゴリー化と語彙理解の問題の解決課程にカテゴリー化が関わっていることが明らかになり、その分析に関し学会にて口頭発表予定(2014年度日本語教育学会春季大会、2014年6月、創価大学にて開催予定)。 4. 学会発表 : 問題修復や学習との関連の考察を目指し、日本語学習者のコミュニケーションに関わる意識面の動きの質問紙調査結果をまとめ、学会発表を行った(計量国語学会、2013年9月、首都大学東京にて開催)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度の研究実施計画をおおむね順調に達成し、分析に必要な資料収集、データベース化も行えた。分析にも着手している。学会発表、学会誌投稿も行い、研究成果を公開できる段階まで進み、さらに本格的な分析に進むための見通しを現時点で得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
分析データも整い、今後は日本語学習者のコミュニケーションにおける問題修復についての本格的な分析に進む。当初の計画では、問題から修復へ向かう「意味交渉」と呼ばれるプロセスを、認知・伝達処理を語用論的に分析し、そのプロセスのモデル化を目指す予定であった。しかしデータ観察を進める中で、学習者にとって必要なのは、プロセスのモデル化よりも、自分たちの持つ日本語能力で何ができ、どのような学習が達成できるかを提示することであると考えるに至った。そこで今後は、学習当事者が何を可能にしているかについて記述していくことを目指し、会話分析及び成員カテゴリー化分析(Sacks1970)の方法を用いて分析を進め、完璧ではなくとも、複合的な能力を駆使してコミュニケーションを達成することを肯定的に捉える、複言語主義の視点から考察を進める。
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Research Products
(1 results)