2013 Fiscal Year Annual Research Report
高周期シクロブタジエンジアニオン種を基軸とした遷移金属錯体の創成及びその反応性
Project/Area Number |
13J01209
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
伊藤 佑樹 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 有機化学 / シクロブタジエンジアニオン / 遷移金属錯体 / ピラミダン / ゲルマニウム / スズ / 配位子 / 構造 |
Research Abstract |
高周期14族元素からなる配位子として有する遷移金属錯体は高いHOMOと低いLUMOを有することから、これまでにない特異な遷移金属触媒への展開が期待できる魅力的な合成ターゲットである。本研究では、シクロブタジエンジアニオンの骨格元素を全てゲルマニウムで置き換えたテトラゲルマシクロブタジエンジアニオンを鍵反応剤とした新規な遷移金属錯体の創成を指向したものである。本年度は、まずこれまで問題となっていたメタルハロゲン交換反応を抑制できるテトラゲルマシクロブタジエンジアニオンのカルシウム塩の合成を検討した。 既に合成に成功しているテトラゲルマシクロブタジエンジアニオンのカリウム塩とヨウ化カルシウムを検討した。しかしながら、単離が困難であったことから、目的のカルシウム塩の単離には至らなかった。 そこで、カルシウムの代わりにゲルマニウムやスズの導入を目的にシクロブタジエンジアニオンとジクロロゲルミレン並びにスタニレンとの反応を検討したところ、シクロブタジエンジアニオンのゲルマニウム及びスズ塩の合成に成功した。この化合物は炭素原子5つからなる四角錐型分子「ピラミダン」の高周期14族元素類縁体とも見なすことができる、基礎化学的に極めて重要な興味深い化学種である。理論・実験の両面から生成したピラミダンの構造や電子状態について検証したところ、確かにシクロブタジエンジアニオンの骨格原子と頂点のゲルマニウム及びスズ結合のイオン性が高く、シクロブタジエンジアニオンのゲルマニウム及びスズジカチオン塩としての性質を持つことを明らかにした。また、ピラミダンからシクロブタジエンのルテニウム錯体の合成にも成功したことから、遷移金属錯体の良い前駆体と成りうることも明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、シクロブタジエンジアニオンを配位子とする遷移金属錯体の合成を目的としているが、その前駆体となることが予想される「ピラミダン」の高周期14族元素類縁体の合成に成功している。また、その興味深い構造や性質も明らかにするのにとどまらず、遷移金属錯体の前駆体としての有用であることまで明らかにしている為。
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Strategy for Future Research Activity |
「ピラミダン」は特異な構造から基礎化学的な観点から非常に重要であり、その性質や反応性の解明には興味が持たれる。ピラミダンはシクロブタジエンジアニオンとスズカチオンという有機化学的な側面とシクロブタジエンのスズ及びゲルマニウム錯体と言う無機化学的な側面を備えており、その解明によってより遷移金属錯体の化学の理解にも繋がることが考えられる。そこで、まずは「ピラミダン」の頂点により高周期な鉛やアンチモンなどの元素の導入し、その構造や電子状態についてX線結晶構造解析、各種スペクトル測定、理論計算から系統的に解明していく予定である。
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Research Products
(8 results)