2013 Fiscal Year Annual Research Report
植物の核膜の可塑性を支える仕組みとその生理学的意義
Project/Area Number |
13J01227
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
後藤 千恵子 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | シロイヌナズナ / 核の形 / 核膜 |
Research Abstract |
核膜はただの滑らかな膜ではなく, 核表面に溝状の構造を形成したり, 核膜が核内部に陥入したりすることが報告されている. 本研究は, この核膜が柔軟に変形する性質(核膜の可塑性)が維持される仕組みとその生理学的な意義を解明することを目的とする. 解析対象であるKAKU4とLINC1はいずれも核膜に局在しシロイヌナズナの核の形の維持に関与している. KAKU4-GFPが過剰に蓄積すると, 核膜の変形やリング状構造の形成が引き起こされる. 本年度はこれらの因子について詳細な解析を行い, 以下の成果を得た. 1. 局在 : 免疫電子顕微鏡解析により, KAKU4は核内膜の核質側に局在することが示唆された. このことからKAKU4は核の裏打ち構造を構成しているという説が浮上した. 2. 相互作用 : 酵母ツーハイブリッドアッセイにより, KAKU4とL1NC1は相互作用することが示唆された. この結果はKAKU4-GFPの免疫沈降産物を質量分析した結果により示唆されていたKAKU4-LINC1間相互作用を支持するものである. 3. 核膜の形態 : タバコの一過的発現系により核膜マーカーSUN2-GFPとKAKU4-FLAGを同時に過剰発現させたところ, シロイヌナズナのKAKU4-GEP過剰発現体で見られるのと同様のリング状構造が観察された. 一方, SUN2-GFPのみを発現させた場合は比較的滑らかな核膜が可視化され, リング状構造は形成されなかった. よって, リング状構造はGFPではなくKAKU4の機能により形成されることが示唆された. 、KAKU4-GFP過剰発現体の電子顕微鏡観察では, 核膜の湾曲や核膜の層状構造が見られた. 核質を二重膜で取り囲むリング状の構造体も見られ, その二重膜上に核膜孔複合体が検出されたため, 少なくとも核内膜と核外膜の二重膜が同時に核内に陥入する核膜の伸展様式があると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は1. KAKU4およびLINC1の核膜上での存在形態(局在および相互作用), 2. KAKU4-GFPリング状構造に着目した核膜の形態, 3. 核膜が変形することの生理学的意義の3つについて解析を進めることだった. このうち1と2についてはほぼ計画通りに解析を終え, かつ計画には含まれていなかったが派生して得られた結果も存在する. 3の生理学的意義に関しては, 予定していた実験をまだ行っていない.
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Strategy for Future Research Activity |
上記の成果をまとめた論文は, 現在投稿中である. KAKU4やLINC1の核膜への局在化様式について, 予定していた実験は終了したが, その局在化の機構は明らかにならなかった. そこで, さらに詳細な解析(膜分画実験)を追加する. また, 核膜が変形することの生理学的意義を探る解析を推進する.
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Research Products
(3 results)