2014 Fiscal Year Annual Research Report
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13J01346
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
寺尾 恵仁 慶應義塾大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 上演分析 / 政治の演劇性 / 自己表現の理論的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究費は、ドイツおよび日本の現代演劇における特徴的な自己表現・演技様式について研究する事を目的とする。採択二年目となる2014年度は、一年目のリサーチを論文形式で発表する点で大きく研究に進展が見られた。慶應義塾大学文学部藝文学会『藝文研究』第106号投稿論文では、スイスの精神障碍者の劇団とフランスの振付家の共同制作における、舞台上の障碍者の表現のパラドクシカルな特性について分析を行った。同107号投稿論文では、日本の若手の小劇団の演技を、心理学と現象学の理論をもとに分析を行った。また慶應義塾大学独文学研究室『研究年報』第32号投稿論文では、ドイツ現代演劇の特色ある上演について、政治論におけるカリスマの自己表現との関係性を通して論じた。それぞれ、日本の演劇学において、いまだ部分的にしか論じられていない特徴的な上演を、多彩な理論的蓄積と独自の観点によって論じた、刺激的な論考だと自負している。また特別研究員奨励費によって、「越境者の身振り ―演技と政治」と題して、演劇研究者・批評家・政治活動家を招聘したシンポジウムを実施した。基調講演では俳優の越境性および演劇と政治の関係性について紹介し、パネルディスカッションでは現代演劇と政治活動の関係性について議論を行った。特に、日本の演劇学では通常顧みられない、政治的行為における演劇性について、理論的見地から踏み込んだ議論を行う事ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、日本とドイツ双方の現代演劇における、従来の俳優概念を刷新するような実験的演技実践の分析を目的としている。2014年度は、2013年度に続いて演劇研究者・批評家・実践活動家を招いてのシンポジウムを実施する事ができ、幅広い視点から演技の多様な可能性について議論を行う事ができた。シンポジウムの内容を記録冊子化した事と併せて、現代演劇研究において重要な問題提起を行えたものと自負している。また、2014年度には前年度に収集した多くの研究素材について、複数の論考の形式で発表する事ができた。シンポジウムと同様、従来の演劇学ではほとんど議論されていない現代演劇の特徴的な演技を、現象学・政治学等との関連において理論化する事ができた。以上の理由から、2014年度は予想以上の成果を挙げる事ができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
採択最終年度にあたる2015年度は、2013年度「都市と演劇」、2014年度「政治と演劇」に続き、「法と演劇」のテーマでシンポジウムを行う。演劇制作者だけではなく、法学および法律行政の専門家を招き、現代社会の法体系において、どのような「演技」が求められ、かつ実践されているのかを考察する。従来の演劇学とは異なる切り口によって、演技概念の深化・刷新の契機となる問題提起が期待される。
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Research Products
(3 results)