2014 Fiscal Year Annual Research Report
η’中間子の光生成を用いた対称性の破れによる質量生成機構の実験的解明
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13J01348
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水谷 圭吾 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カイラル対称性 / 低エネルギーQCD / η'中間子 / 軸性異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
陽子や中性子などのハドロンの質量の大部分は、カイラル対称性の自発的破れによって生成されると考えられている。この質量生成機構によれば、原子核のような高密度物質中ではカイラル対称性が部分的に回復し、ハドロンの質量が変化する。本研究では、量子異常効果により質量変化が特に大きいと期待されるη'中間子を原子核中で生成し、その質量変化を観測することでカイラル対称性の自発的破れによる質量生成機構の検証を行う。 本研究ではSPring-8/LEPS2ビームラインの高エネルギーガンマ線を原子核標的に照射することでη'中間子を生成する。標的まわりに置いた検出器群により、η'中間子生成からの信号をとらえる。主検出器は1320本のBGOクリスタルからなる高分解能電磁カロリメータBGOegg検出器である。BGOegg検出器では、η'中間子が原子核中の核子と反応してη中間子に変化したのち生じる2本のガンマ線を、実験室系で24°から144°の範囲で検出することができる。BGOegg検出器で検出された粒子が電荷を持たないことを確認するために、BGOegg検出器の内側にあるCDC検出器およびIPS検出器を用いる。またη'中間子生成時に生じる前方陽子の運動量は、前方飛跡検出器であるドリフトチェンバーおよび、TOF検出器であるRPC検出器を用いて測定する。 本LEPS2/BGOegg実験は2013年12月にパイロットランを行い、2014年4月から炭素標的を用いた物理ランの取得を開始した。また、η'中間子と核子との相互作用を調べるための液体水素標的を用いたデータ取得を2014年11月に開始している。液体水素標的のデータはフェルミ運動の効果が無いので、検出器の較正にも用いられる。現在、各検出器の較正および物理データの解析が行われているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、データ取得システムのデバッグおよびデータ取得効率改善を予定していた。2013年12月のパイロットラン時は、ガンマ線エネルギー標識化のためのタガー検出器がトリガーに参加しておらず、データ取得効率も低かった。2014年4月にタガー検出器をトリガーに参加させ、タガー検出器およびRPC検出器の読み出し方法を改善することでデータ取得効率を向上させた。現在、0.5 kHzのトリガーレートに対して目標値である90 %程度のデータ取得効率で動作している。 各検出器の較正も、主に液体水素標的データを用いて順調に進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、引き続きデータ取得を行いながら、各検出器の較正および物理データの解析を行う。η,η',ω中間子の液体水素標的および原子核標的中での生成量を調べ、核子との相互作用および原子核内での性質変化についての情報を引き出す。
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Research Products
(2 results)