2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J01356
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
有井 巴 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 言語獲得 / 比較構文 / 大人と異なる解釈 / 意味論 / 国際情報交換 / アメリカ |
Research Abstract |
「2個多い」や「2メートル高い」のような、差を数詞で表した比較構文(dirferential comparative)に対して、日本語児は大人と異なる解釈を与える。例えば「太郎のリンゴは2個多い」という比較構文を、「太郎のリンゴの数は2個だ」というように絶対的に解釈してしまう。また、「太郎のリンゴは花子のより2個多い」のように基準を明示しても、子供は絶対的な解釈をする。 今年度の研究では、このような比較構文を絶対的に解釈する5~6歳児は、1対1の対応関係や引き算(求差)を用いて2つの数の差を正しく出す能力を備えていることを明らかにした。そして、子供がdifferential comparativeを絶対的に解釈してしまう原因は、子供が比較構文に関して大人と異なる文法を持つことにあることを示した。 また、アメリカのRutgers University准教授のKristen Syrett氏と津田塾大学准教授の郷路拓也氏との共同研究により、英語児も日本語児と同様に"John has 2 more apples"や"This building is 2 meterstaller"のような比較構文を絶対的に解釈することを明らかにした。つまり、-erやmoreのような比較の意味を表す形態素があっても、子供はdifferential comparativeを絶対的に解釈することがわかった。これまでの子供のdifferential comparativeの解釈を、Svenonius and Kennedy (2006)とSawada and Grano (2011)で提案されている大人の比較構文に関する文法理論と関連づけ、子供はdifferential comparativeに関して大人と同じ統語・意味構造を持っているが、比較の基準を初期値として絶対的ゼロにとってしまうと論じた。初期値を絶対的ゼロにとる所以は、意味解釈の経済性によるものと考えられる(Interpretive economy (Kennedy (2007))。この内容を、Chicago Linguistic Society50で発表した。 次年度は、「少し多い」のような数詞を含まない比較構文について、子供はどのような解釈をするかを調べた上で博士論文を完成させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子供がなぜ比較構文に対して大人と異なる解釈をするのかについての原因を絞り込み、大人の文法理論と結び付けることができた。また、その成果を国際学会で発表する機会を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、数詞を含まない「少し多い」「少し高い」のような比較構文の子供の解釈を調べ、子供の絶対的な解釈は数詞を含む比較構文に特有のものなのかを調べる。また、子供がどのように大人と同じ解釈をするに至るかを研究し、その獲得過程を説明するには大人の比較構文の文法がどのようなものでなければならないかを研究する。夏から1年間visiting studentとしてアメリカのRutgers大学に行き、同大学の准教授であるKristen Syrett氏のもとで博士論文を完成させる予定である。
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Research Products
(6 results)