Research Abstract |
私は水溶液の混合様式を熱力学, 特にギブズエネルギーの3次分量を用いて解明しようとしている. ギブズエネルギーは系の熱力学的な情報を含むが, 微分することにより更に詳細な情報を得ることができる. ギブズエネルギーの3次微分量は, 溶質の疎水性/親水性によりピーク型/屈折型の異常をもつ, 逆にこれを利用して3次微分量を求めることにより水溶液の疎水性/親水性を求めることができる. また, 異常が出る濃度を横軸に, その温度を縦軸にして図に描写すると, 溶質ごとに1つの曲線上にのる. その曲線を『コガライン』と呼んでいる. 3次微分量やコガラインの性質をより詳しく調べるため, テトラヒドロフラン(THF)水溶液の3次微分量を求める. まず, 研究室既設の装置を用いて, THF水溶液の^<SV>δ(=Tα_p)の濃度微分量を直接測定を行った. 結果はピーク型の異常を示し, THFが水溶液中で疎水的な振る舞いを行うことがわかった. また, 5℃から40℃までの測定を行い, ピークの濃度とその時の温度の関係性を調べると, 図上で1つのコガラインを形成することがわかった. コガラインを低温に近づけていくと, THF水溶液が包接化合物を形成する温度・濃度に近づいていくことがわかった. これにより, コガラインと包接化合物の構造に何かしらの関係性があると期待される, コガラインを無限希釈まで外挿すると, その値は他のコガラインの外挿値と一致した. また, THF水溶液の他の3次微分量として部分モルエンタルピー・エントロピー・体積の濃度微分量を求めようとしている, 部分モルエンタルピーは混合熱測定, 部分モルエントロピーは化学ポテンシャルと部分モルエンタルピーから求めることができる, まず, 化学ポテンシャルを求めるため, 蒸気圧測定を行った, 蒸気圧測定装置を作成し, 求められた蒸気圧からTHF水溶液の化学ポテンシャルを求めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
蒸気圧測定装置の作成と滴定熱測定の装置の整備に想定以上の時間を取られた. 蒸気圧測定装置を作成する際, 私に装置作成のノウハウがなく, ミスや無駄な過程が多くなってしまった. 完成後の測定はスムーズに行われた. 滴定熱測定用の装置は長い間使われておらず, 予期しない整備が必要であった. また, 校正が前に測定が行われていたデータが残っておらず, 校正に手間がかかってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後, 滴定熱測定により部分モルエンタルピーの濃度微分を求める, これにより化学ポテンシャルの濃度微分量は蒸気圧測定により求めているので, 部分モルエントロピーも求めることができる. 研究室にある装置では時間がかかりすぎるが, 迅速な測定を行うため, デンマークのPeter Westh教授の研究室に行き, 全自動の滴定熱測定装置を用いて測定を行う. また, 1p-プロービング法をテトラヒドロフラン水溶液に用いる. 1p-プロービング法とは, 水溶液に1-プロパノール(1P)を滴下し, その滴定熱より部分モルエンタルピーの濃度微分量を求める. それを, 純水に滴下した時の物理量と比較し, 溶質の親水性/疎水性を評価するものである. 装置は研究室既設の装置を用いて行う.
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