Research Abstract |
当該年度では, 1. 自己組織化単分子膜(SAM)の共吸着による有機トランジスタ(OTFT)のしきい値電圧の連続的制御2. ソフトリソグラフィを用いたSAMの2次元パターニングの確認とトランジスタアレイへの応用3. 多点電極アレイ(MEA)の作製とMRI内での動作確認と電極材料によるアーティファクトの評価を行った. まず1では, アルミ酸化膜の表面にホスホン酸系SAMであるtetradecylphosphonic acid (HC8-PA)とperfluorooctylphosphonic acid (FC8-PA)を共吸着したものを絶縁膜とし, 半導体層にdinaphtho [2,3-b : 2', 3'-f] thieno [3,2-b] thiophene (DNTT)を使用したOTFTを作製し, 動作確認を行った. FC8-PAの混合比を変化させることで, -2Vの駆動電圧下において, OTFTのしきい値電圧は0.35Vから-1.08Vまで変化した. また, 共吸着されたSAMの表面をXPSとNEXAFSを用いて解析し, 混合比によってFC8-PAのアルキル鎖がどのような挙動を示すかについての知見を得た. 次に2では, サンプル表面にFC8-PAをソフトリソグラフィで成膜した後, HC8-PAを浸漬法によって成膜し, 表面をTOF-SIMSによって観察した. その結果, FC8-PAとHC8-PAがコンタミネーションなく成膜されていることが確認された, OTFTのしきい値電圧制御を, 連続的かつ空間的に行うことは, OTFTの回路応用に非常に重要である. また, OTFT回路を実デバイスに応用する際は, 駆動電圧を低減することが必要となる. 当該年度の実績によって, これらの課題が解決された. また, 共吸着されたホスホン酸系SAMの分子配列について, 初めての観察が行われた. 今後は, しきい値電圧の制御を実際の回路に応用することが期待される. 最後に3では, MEA上にOTFTを搭載したものを作製し, MRI内での動作について確認をした, OTFTを7Tの静磁場下で動作させた結果, 磁場印加のある・なしでOTFTの動作に変化は確認されなかった. また, 電極材料をAuとITOとで比較したところ、電極の大きさによってアーティファクトの強弱が変わること, ITOの方が小さいアーティファクトが観測されることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
増幅回路のためのトランジスタの制御についての研究は順調に進んでいる. トランジスタの制御について確認を行ったのみでなく, 成膜したSAMについて詳細な観察を行えたことは, 重要な結果である. MEAデザインについては, アーティファクトの問題, 電極材料の選択についての問題が生じたため, フィードバックを繰り返しながら実験を進めた一方, トランジスタを早くから搭載し, 動作についての確認を行えたため②とする.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はOTFTと細胞培養とを組み合わせて実験を行っていく. 細胞培養では一般的に細胞は倒立顕微鏡を使用して観察されるため, デバイスの透明性は重要である. そのため, 従来から使用してきた電極材料をAuからITOに変更し, OTFTの動作特性から評価を行う. 細胞はPC12を対象とする. PC12が自家発火した際の膜外電圧の変化を観測するための回路を作製し, MEAに搭載する. 当該年度では, OTFTをMRI撮像エリアである細胞培養エリアの直下に搭載し, MRIで観察したが, 細胞培養環境にさらされることを考慮し, OTFTを細胞培養エリアから離れた場所に搭載するパターンも作製し, 評価を行う. また, 共吸着したSAM膜の評価について, 表面での相分離を観察する.
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