2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J01411
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阿部 圭宏 京都大学, 数理解析研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 被覆時間 / 局所時間 / パーコレーション / Gaussian freefield |
Research Abstract |
1.2次元以上の立方格子上で優臨界相ボンドパーコレーションを考え, 立方体内の最大クラスター上のランダムウォークの被覆時間を精密に評価した. その結果, 次元が3以上の場合, 最大クラスターの被覆時間は, 通常の立方体の被覆時間とは異なるオーダーであることを示した. 2次元の場合では, 2つのモデルの被覆時間は同じオーダーであることも示した. 優臨界相パーコレーションクラスターと立方格子の2つのモデルでは, それらの上のランダムウォークの多くの性質が類似していることが知られている. このように, 2つのモデルの類似性を示す先行研究が多い中で, 3次元以上の場合で被覆時間に関して2つのモデル間に明確な差異があることを示したことが本研究の重要な点である. 上記の結果の証明では, 最大クラスター上の任意の2点間の有効抵抗を評価して, 既知である被覆時間と有効抵抗の関係式を援用することによって, 最大クラスターの被覆時間を評価した. この有効抵抗の評価自体, 3次元以上では新しい結果である. 2次元の場合では先行結果があるが, その証明内で不明確な箇所が見つかった. 本研究ではその箇所を別証明を与えることで補った. この結果について論文執筆を行い, 学術誌に掲載が確定した. 2.2次元格子内のボックス上のランダムウォークを考え, 局所時間のレベル集合のサイズをある条件の下で精密に評価した. その結果, 局所時間のレベル集合のサイズに現れる指数は, 対応するGaussian free fieldのそれと非常に近いが異なる値であることがわかった. ランダムウォークの局所時間とGaussian free fieldは類似した性質をもつことが知られているが, 今回の結果ではこの2つのモデル間に微妙な差異があることを明らかにした. 今後, 今回課した条件を緩め, 上記のモデルの局所時間の最大値を精密に評価する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
立方格子上の優臨界相パーコレーションクラスターの被覆時間の正しいオーダーを評価し, 通常の立方体の被覆時間との相違点を示せたことは大きな進展である. しかし, その被覆時間の分布がある値に集中しているかや, パーコレーションクラスター上のランダムウォークが訪れにくい点の特徴づけなどといったより深い結果を得ることはできていない. 2次元格子上のランダムウォークの研究では, 局所時間のレベル集合をある仮定の下で評価できたが。その仮定を外すこと. 局所時間の最大値を評価することなどの課題が依然として残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2次元トーラス上のランダムウォークの局所時間と被覆時間, 2次元格子上のGaussian free fieldの解析手法では類似点が多いことが知られている. そこで, 2次元トーラスの被覆時間や2次元格子上のGaussian free fieldの先行研究で使われている手法を援用して, 2次元トーラス上のランダムウォークの局所時間の最大値とレベル集合のサイズを精密に評価し, さらに局所時間の大偏差に関する研究を推し進める. 優臨界相パーコレーションクラスター上のランダムウォークは, クラスター内の1次元的な構造により, 複雑な振る舞いをすることが先行結果により知られている, そこで, その先行結果の手法を援用して, パーコレーションクラスターの1次元的な構造が被覆時間の評価にどのように影響するかを調べる.
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