2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J01411
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阿部 圭宏 京都大学, 数理解析研究所, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 局所時間 / 2次元ランダムウォーク / Gaussian free field |
Outline of Annual Research Achievements |
2次元離散トーラス上の単純ランダムウォーク(SRW), すなわち各ステップで移動先を隣接点から等確率で選ぶランダムウォークを考え, SRWが初めてすべての点を訪問したときの時刻(被覆時間)を定数倍した時間だけ走らせる. その時刻におけるSRWの局所時間(SRWがある時刻までに各点を何回訪問したかを表す量)の最大値・最小値の第1次オーダーを係数も含めて精密に評価した. さらに局所時間が最大値あるいは最小値付近の値をとる点の個数を精密に評価した. Eisenbaum-Kaspi-Marcus-Rosen-Shi(2000)の結果により, SRWの局所時間は界面の数学的模型として有名なGaussian free field (GFF)と密接な関係があることが知られている. 特に2次元格子上のGFF(2次元GFF)は統計物理の様々な2次元模型と関連があり, 重要視されている. Bolthausen-Deuschel-Giacomin(2001)とDaviaud(2006)は, 2次元GFFの最大値の第1次オーダーと2次元GFFが最大値付近の値をとる点の個数に関する精密な評価を得た. 上記のEisenbaumらの結果により, (正規化した)局所時間の最大値とGFFの最大値は類似すると期待される. しかし, これら2次元GFFに関する先行結果と本研究結果を比較することにより, 2次元SRWの局所時間の最大値と2次元GFFの最大値の評価の間には微妙な差異があることがわかった. また2次元SRWの局所時間が最大値付近の値をとる点の個数と2次元GFFが最大値付近の値をとる点の個数の評価においても差異が現れることもわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載したようにEisenbaum-Kaspi-Marcus-Rosen-Shi(2000)の結果によりSRWの局所時間とGFFは密接に関連しており, 両者は様々な面で類似していることが先行研究により知られているが, 両者の差異を表す性質はあまり知られていない. そこで本研究では2次元SRWの局所時間の最大値と2次元GFFの最大値に関して定量的な差異を見出すことを目的とし, 研究の結果として両者の第1次オーダーの係数に差異が現れることを示した. このように当初の目的を達成できたため, 「おおむね順調に進展している」と判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までに2次元SRWの局所時間の最大値の第1次オーダーを係数も含めて精密に評価した. 今後の研究課題としてさらに第2次オーダーを精密に評価するという課題がある. このような最大値の第2次オーダーを精密に評価する研究は様々なモデルで行われており, 「研究実績の概要」に記載した2次元GFFについてはBramson-Zeitouni(2012)がそのような研究を行っている. 他にも直線上をBrown運動しながら分裂を繰り返すモデルである「分枝Brown運動」(Fisher-Kolmogorov-Petrovski-Piscounov方程式という偏微分方程式との関連が知られており重要視されている)やその離散版である「分枝ランダムウォーク」のモデルでもそれぞれBramson (1978), Addario-Berry-Reed (2009)により同様な研究が行われている. そこでこれらの先行研究で用いられた手法を援用して2次元離散トーラス上のSRWの局所時間の最大値の第2次オーダーを精密に評価することが今後の課題である.
|