2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J01417
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤田 恭平 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 神経冠細胞由来幹細胞 / クロマチンリモデラー / エピジェネティクス / BMP/Wnt signaling / マウス |
Research Abstract |
神経冠細胞の挙動は脊椎動物の胚発生において重要な役割を担っており, その分化メカニズムは世界的にも研究が進められている。しかし, 神経冠細胞由来の幹細胞(NCSCs)はin vivoにおいて存在は確認されているが, その形成機構に関してはネ明な点が多い。NCSCsの形成機構を解明するために, 私は神経冠細胞の未分化状態維持機構に着目し, それに関与するクロマチンリモデリング因子CHD7に特に注目し, in vivoでの解析を進めている。 前年度までに, マウスNCSCs (mNCSCs)の形成機構について、我々の研究グループでは以下のような結果を得ていた。①未分化神経冠細胞のマーカーであるSox10, p75を発現する未分化状態マウス神経冠細胞にはクロマチンリモデリング因子CHD7が発現している。②mNCSCsの形成には, BMP/Wntシグナルが促進的に働く。③CHD7はBMP/Wntシグナルによって活性化され, mCSCsの形成を促進する。 CHD7はヒストンH3のメチル化領域に結合することがわかっている。このことを踏まえ, マウス体幹神経冠細胞を培養し, CHD7発現プラスミドと共に特異的な領城をメチル化するメチル化酵素に対するsiRNAを導入し, マウス体幹神経冠細胞の未分化状態の維持に関与しているメチル化修飾の種類やメチル化酵素を同定することを本年度の目標とし, 解析をおこなった。具体的な手法として, マウス体幹神経冠細胞にCHD7発現プラスミドと, ヒストンH3K4に特異的なメチル化酵素やK9に特異的なメチル化酵素に対するsiRNAを共導入して6日間培養し, sox10とCHD7に対する抗体による免疫染色をおこなった。これにより, 神経冠細胞の未分化状態維持に関与するメチル化酵素およびメチル化部位の特定を試みた。その結果, 遺伝子発現の促進に関与するヒストンH3K4のモノメチル化に特異的なメチル化酵素Setd7, トリメチル化に特異的なメチル化酵素MLL・Setdla, および遺伝子発現の抑制に関与するK9のトリメチル化に特異的なメチル化酵素ESETのsiRNAによる阻害が, mNCSCsの形成を有意に抑制する結果を得ることができた。 これより、mNCSCsの形成には、ヒストンH3のK4またはK9のメチル化修飾が重要であり、CHD7はそのどちらかまたは両方の修飾領域に結合している可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主たる実験手法はマウス神経冠細胞を用いたChIP assayである。しかし, 神経冠細胞は極端に細胞数が少なく, 従来のChIP assayを使用することは難しい。この問題を解決するために, 現在μChIP assayを検討しているが, その条件設定に時間がかかっているために計画にやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後, μChIP assayの条件設定を早急に進める。主に神経冠細胞の溶解に適したdetergent (SDSやNP-40など)の選定, クロマチンを切断手段(超音波破砕またはMNase)の条件検討をおこなう。それを用いてCHD7が結合するヒストンメチル化領域の修飾模様および修飾酵素の同定をおこなう。また, 神経冠細胞由来の幹細胞を形成するに当たってCHD7が制御する転写因子または, 相互作用する因子の同定もおこなっていく。これらの解析はμChIP assayからのqPCRやWestern Blottingなどを用いて解析していく。そのために, 解析前に因子の候補をあらかじめ数種類選定し, 円滑に研究が進められるように準備しておく。
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Research Products
(3 results)