Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物に特有の神経冠細胞は,発生初期に神経褶より胚の各所へ遊走し,末梢神経細胞やグリア細胞,軟骨細胞,色素細胞などへ分化する。近年,成体においても一部の細胞が多分化能を維持し,神経冠細胞由来幹細胞(Neural Crest-derived Stem Cells,NCSCs)として,骨髄や神経節, 皮膚などに存在することが報告されている。しかし,NCSCsの形成機構は不明な点が多い。そこで本研究では,NCSCsの形成機構について,分子レベルでのより詳細な解析を目的とし研究をおこなっている。これまでの研究から,マウスNCSCs(mNCSCs)の形成機構について,① mNCSCsの前駆細胞である未分化状態マウス神経冠細胞は,未分化神経冠細胞の指標であるSox10,p75だけでなく,クロマチンリモデリング因子CHD7を発現している。② mNCSCsの形成には,BMP/Wntシグナルが促進的に働く。③ BMP/Wntシグナルによって活性化されたCHD7は,多分化能の維持を促進し,mNCSCsの形成を促す。④ 成体のマウスにおいても,CHD7やSox10,p75を共発現するmNCSCsが後根神経節や座骨神経に存在する。 というような結果を得ることができた。 現在,mNCSCsの形成機構を,CHD7や転写因子がどのように作用し,どのような遺伝子を制御しているのかについて,未分化状態神経冠細胞を用いたμChIP assayにより解析している。現在までに,CHD7とZic1のFoxD3 cis-regulatory elementへの結合能が,BMP2/Wnt3a の処理によって特に促進される結果が得られている。これらの結果から, BMP2/Wnt3aによるmNCSCsの形成の促進は,CHD7とZic1によるFoxD3の発現調節が重要であると考えられる。
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