2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J01420
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野間 純平 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 準体助詞 / ノダ文 / 文法化 / 大阪方言 / 加賀方言 |
Research Abstract |
本研究では、日本語各地方言における準体助詞の体系を調査する。この「準体助詞」とは、現代標準語において「もっと大きいノが欲しい」や「荷物を運ぶノを手伝う」などにおける「ノ」を指す。これらの「ノ」は名詞句を作る機能を持っている。しかし、現代標準語では、それが「今日は客が来ているノダ」「雨が降っているノデ、運動会は中止だ」「雨が降っているノニ、運動会を行う」のように、文末の「ノダ」や接続助詞の「ノデ」「ノニ」の一部として用いられることもある。 本年度は、文末の「ノダ」の中でも、「準体助詞+コピュラ」(コピュラは「ダ」に当たる形式)からさらに変化して新しい形式になるという現象について研究を進めた。具体的には、大阪方言と、金沢市を中心とする石川県加賀方言を主な対象として取り上げた。大阪方言には「ネン」や「テン」、加賀方言には「ゲン」「ガン」「-eN」「-aN」などという形式があり、これらは名詞句を作る準体助詞としては働かず、専ら話し手の態度を聞き手に伝えるモダリティ形式として働く。また、これらの形式は共通語の「ノダ」に比べて、「へー、あの人たばこ吸うんだ」のように独り言で使うことはできない。 このような新たな形式ができるという現象は、準体助詞からノダへ、さらにノダ専用のモダリティ形式へという文法化という変化としてとらえられる。だが、その文法化のあり方は大阪方言と加賀方言とで異なっており、その違いの背景には、変化の時期や状況などの違いがあると考えられる。本研究は、準体助詞の文法化のうち、最も進んだプロセスを取り上げており、準体助詞の変化の中でも他の方言にあまり見られない現象を取り上げている。これは言語変化やモダリティの研究において意義があると言える。 以上のような研究の成果を、論文および口頭発表の形で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究にあたって必要な方言調査を行い、研究発表および論文執筆も行った。特に日本語学会における発表は、今年度の研究の核となるものであり、口頭発表の場において、多くの出席者から有益なコメントをいただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度行った大阪や加賀の調査を引き続き行いつつ、ノダからモダリティ形式への変化が同様にこっているされる石川県能登地方や富山市などでも調査を行う。そして、その成果について学会にて口頭発表を行う。また、今年度行った口頭発表の論文化も行う。 なお、当初の予定では、26年度には静岡県や島根県の方言を調査する予定ではあったが、調査を進めるにつれて、金沢の周辺の能登や富山においても類似の現象が見られることがわかったため、それらの地域の調査を行うこととする。加賀地方だけでなく、その周辺も含めて研究を行うことで、より深く研究を進められると判断したためである。
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Research Products
(6 results)