2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J01421
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久保田 裕次 京都大学, 公共政策連携研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 対中国政策 / 借款 / 「勢力圏」 / 華中・華南地域 / 漢冶萍公司 |
Research Abstract |
国内での積極的な史料調査に加え、イギリスや中国など海外での調査も行った。第一次世界大戦期における日本の対中国借款を規定していた中国やイギリスの主体性を明らかにするための史料を収集したことにより、当該期における日本の対中国借款に関して、国内の経済的要因のみからではなく、束アジア国際政治の力学から検討を加えることができるようになった。 2013年7月には、「第一次世界大戦期における「日中経済提携」と漢冶薄公司一九州製鋼株式会社の設立をめぐって一」がr九州史学』165号に掲載された。また、「華中・華南の鉄道利権と「勢力圏」外交一第一次世界大戦期を中心に一」を執筆、投稿した。こうした研究成果を通じて、本研究が目的に掲げている近代日本における対中国借款を総体的に把握する研究を遂行した。 そして、博士論文「近代日本における対中国借款の研究を大阪大学に提出し、博士(文学)の学位授与を受けた。本論文は、これまで資本主義史研究を中心とする経済史研究の対象となってきた対中国借款を外交史・政治史の観点を踏まえ再検討した研究である。近代日本の対中国借款は経済的要因のみならず、日中英関係という東アジアにおける国際秩序にも規定されていたことを指摘した。日清戦争以降、近代日本の中国借款が単線的に中国利権の独占・支配へとつながり、植民地支配を進めていったという先行研究が提示してきた歴史像を捉え直し、対中国借款の段階的差異と国内外の規定性を明らかにした。また、本論文は現代的な意義も持っている。第一に、「中国」の多様性を踏まえ、借款という経済外交を歴史的に分析することによって、今後の対中国経済外交や日中関係を考えるための素材を提供した。第二に、日中関係のみならず、欧米諸国の動向にも配慮しているため、広く東アジアの国際秩序について考える上でも参考とすべき研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画の通り、博士論文を提出し、学位(文学)の授与を受けた。本論文は、海外での史料調査の成果も踏まえ、日本近代史に関する研究史上においてのみならず、現代的意義をも持ち合わせている。また、博士論文の執筆のみにとどまらず、論文・書評の発表などの研究実績をあげた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果を念頭に置くと、本研究課題の今後の推進方策は主に以下の二つが挙げられよう。第一に、引き続き海外での調査を行い、本研究が日本国内のみならず、国際的に大きなインパクトを与える研究となるように努めることである。具体的には、今年度実施したイギリス・中国に加え、来年度はアメリカでの調査や海外での研究報告などを計画している。 第二に、本研究は外交史、思想史、政治史の視点を取り入れることを目標に掲げているが、今後は特に政治史に関する知見を深めたい。そのために、政治家の一次史料や政党の機関誌などを継続的に、かつ着実に収集・読解することを目指す。
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Research Products
(2 results)